しかも、『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』(本間龍、南部義典・著/集英社新書)では、自民党を筆頭とした政党だけではなく、日本会議のフロント団体などの右派勢力による改憲賛成を煽るCMが放送される可能性も考えられるという。通常、テレビ局や広告代理店が気にする“支払い能力がある団体か否か”という問題も、「自民党に口添えしてもらえばいい。政権与党がバックについているなら、審査部も細かいことは言わないでしょう」(本間氏)というのだ。
国民投票運動CMでは、安倍自民党が改憲案に盛り込もうとしている教育の無償化や充実を前面に押し出したり、北朝鮮や中国の脅威や自衛隊の被災地復興活動などを繰り返し流し、9条に自衛隊を明記したほうがいいと刷り擦り込むだろう。いや、安倍首相と仲の良い松本人志や中井貴一、安倍応援団的発言を連発している員であるつるの剛士、小籔千豊のようなといった芸能人らが出演し、「改憲に賛成します」とアピールする意見広告が投票日まで繰り返し放送される可能性だって十分考えられるのである。
前出『広告が憲法を殺す日』によると、先進7カ国で国民投票制度がある国で有償のテレビCM枠を買うことが自由なのはカナダと日本だけ。イギリスやフランス、イタリアでは全面禁止で、「○○派と××派の双方に、国が確保した放送枠を無償で提供する制度が主流」だという。──国民がいますぐ求めてもいない憲法改正の議論をはじめるより前に、喫緊の問題は不公平すぎる国民投票法のCM規定のほうだろう。
(編集部)
最終更新:2018.10.15 11:24