たとえば、震災から6年を迎えようという2017年3月8日、『あさイチ』では震災特集として「データでみる東日本大震災から6年」が放送された。そのなかで、当時流行語となった“震災婚“絆婚”という言葉を紹介、婚姻数が震災翌年には7000件増えたこと、離婚件数が震災前年と比べて1万6000と大きく減少したことなどが“全国データ”で示されたことに対し、有働アナ含めスタジオが無難なコメントに終始するなか、柳沢氏は番組の報道姿勢にこう苦言を呈した。
「一言では言えないね。だって離婚が減っているというのも福島の現実と違う。帰る、帰らないで、いろいろ問題になっている。ひびが入って離婚することが福島の場合には問題になっているくらいなので。全国で大きい目でみるのと、(福島も一緒に)データでくくるのは、正直、違和感がある。くくれない」
「5、6年で現実が見えるものもいいけど、僕は福島出身ということもあって、それはなかなか見えてきませんね。福島の当事者にしてみれば、農作物を作るにしても愚直に、やれることを丁寧に続けるしかないんです」
「日常の戻り方が被災地と被災地でない人の差が大きくなっていますよね。僕たちは震災と関係のない日常が戻っていますけど、被災地はそうではありません」
柳沢氏は被災地、特に福島の現状や離婚の実態を“データ”、それも“全国データ”でひとくくりにして欲しくないと憤り、被災地の現実から目を背け、被災地の状況を正確に伝えないメディアにも苦言を呈した。