また、「小沢一郎の別荘」に関するデマもTwitter上でかなり流通している。これは、9月7日にYouTubeに投稿されたある動画が元ネタ。映像では〈玉城デニー氏と超豪華別荘の関係は?〉なるテロップのもと、自由党の小沢一郎代表が宜野座村にもっている別荘が映し出されており、〈この別荘の建設工事 地元業者がみな嫌がったのを無理やり説得したのが玉城デニー氏だったという〉などと説明されている。これに対し玉城氏はTwitterで〈バカバカし過ぎて相手にしていませんでしたが完全なデマ!です〉と全面否定したのだが、この動画は公明党の遠山清彦衆院議員がツイートするなどして拡散。さも事実かのようにデマが一人歩きしている状態だ。
しかも遠山議員は、玉城氏が14日にFacebookで〈「県や市町村の自由裁量度が高い予算=一括交付金(通称)の創設」を、政府与党(当時民主党)に玉城が直談判して実現にこぎつけた〉と投稿したことに対しても、〈玉城デニー氏の誇大宣伝がわかりました。彼は、一括交付金制度の中身を決めた平成24年3月13日から19日に4回開催された与野党PT交渉委員会議にいませんでした〉〈デニーさん、ゆくさー(嘘)です〉(15日Twitter)などと攻撃。自公の議員が民主党政権に飲ませて、一括交付金制度をつくったなどと主張した。
しかし、実際には一括交付金は2011年12月24日に野田内閣が閣議決定して創設したもの。つまり、遠山議員が何やら言っている「平成24年3月13日から19日に4回開催された与野党PT交渉委員会議」のときにはすでに創設されていたのだ。しかも19日には、民主党政権で一括交付金を担当する総理補佐官を務めた立憲民主党・逢坂誠二衆議院議員が〈沖縄一括交付金は沖縄のみなさんから強い要望があった。副知事さんは何度も私のもとに。玉城デニーさんからも繰り返し要望を受けた。逆に自民、公明の皆さんは一括交付金に批判的だった〉と投稿。その、翌20日には沖縄関連法案に関する与野党PTに玉城氏が参加していたことを文書付きでツイートするなど、遠山議員の言っていることがデタラメであることが白日の下に晒されたわけである。
もっとも、こうしたデマを使ったネガキャンはこれまでも行われてきた。しかし、それにしても今回は一種の社会現象と言えるほど異常。しかも、そのほとんどが玉城氏を攻撃する内容なのだから、佐喜真氏を応援する陣営が組織的に仕組んだものとみられても仕方がない。
「怪文書の類は選挙の常ですが、今回はデマの広がり方も含めて例がない。この間、沖縄でも永田町でもデニー氏に関する怪文書や怪情報が大量に出回っているのですが、明らかに根拠不明で眉唾物ばかり。文春や新潮もそういうネタが危ないとわかっていながら一応取材してみたはいいけど、やっぱり裏が取れず、逆に出てくるのは否定の証拠ばかりといった状況なんでしょう。こうしたデマが『疑惑』などといって取り上げられることで、ネットで一部だけが切り取られ、さも事実かのように流布されているわけですが、その規模からいっても、SNSを使った組織的なネガキャン運動が行われているんじゃないかと疑っている記者は少なくないです」(全国紙社会部記者)
たしかに、自民党がJ-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ)と謳ってネトウヨを組織化していることは有名だが、今回の沖縄知事選にあたっては従来よりもネガキャンが大掛かりだ。たとえば9月11日には「BuzzFeedNews」が沖縄知事選で玉城氏を攻撃する選挙公式サイト風のウェブサイトが設立されていたことを報じ、それらサイトの管理者住所などを調べたところ実態がなかったことを暴いている。背景は不明だが、玉城氏を落選させる目的で、デマを拡散する組織的な動きがある可能性は否めない。