本サイトは、18日付の防衛大からの回答に対して、再度、質問状を送付した。
内容は、防衛大学校の学生が“準公人”であることを確認したうえで、(1)Aさんへの懲戒処分の具体的内容に関する誠実な回答を求める、(2)Aさんを退学・停学にしなかった防衛大学校の処分は妥当なものであったとの認識か、(3)防衛大生が禁じられている車の運転を行い、なおかつ人身事故を起こしたとしても、防衛大学校は当該学生を停学や退学にしないと理解してよいか、という趣旨のものだ。
これに対し、19日付の防衛大側による回答は以下のものだった。
〈1 学生に対する懲戒処分(退校、停学又は戒告)は、「学業に励む」という学生としての位置づけから、一般の隊員に対する懲戒処分(免職、降任、停職、減給、戒告)とは異なっており、懲戒処分を実施した際も、一般の隊員については原則として公表しているものの、学生については、教育上必要な配慮を行う観点から、従来から原則として公表していないことにつきご理解ください。
2 当校としては、当該学生に対する懲戒処分は既に実施しており、その量定は適正なものと考えています。
3 仮定のご質問にお答えすることは差し控えさせていただきますが、個別の事 案については事実関係を踏まえ厳正に対処します。〉
見ての通り、防衛大はAさんへの処分内容の非公表を一歩も譲らなかった。だが、この回答は様々な点で矛盾する。
そもそも、これまでの新聞報道などを見る限り、防衛大はAさんに対して「懲戒処分」を下したことについてすら公表してこなかった。しかも、防衛大は「学生については、教育上必要な配慮を行う観点から、従来から原則として公表していない」というが、過去には、学生に対する処分を公表したケースは少なくない。
たとえば2001年には、大麻取締法違反(密輸入)の疑いで逮捕された防衛大学校生(2年生)を退校の懲戒処分に。2010年には知人女性にわいせつ行為を働いた学生3人(2年生)を退校。このときは現場にいながら犯行を止められなかったとして別の2年生の男子学生2人も停学30日の懲戒処分にした。また、同年には校内で携帯電話や衣類を盗んだ疑いで、2年生の学生と1年生の学生が退校に処されている。2014年には保険金の詐欺容疑で合計13名の防衛大学生を退校に。2016年にも、学生間で暴行や悪質な嫌がらせがあったとして、学生12人と当時の指導教官10人に停学や戒告などの処分を下した(うち2年生2人は停学、3年生2人は戒告の懲戒処分)。
繰り返すが、これらの処分はすべて防衛大学校が発表し、新聞にも載ったものだ。一方、2017年の夏季定期訓練中に禁じられている自動車を運転し、相手が死亡する事故を起こしたAさんについては、防衛大は処分の事実すら公にせず、さらに本サイトの取材に対しても処分内容の公表を拒んだ。これはいったい、どういうことなのか。
やはり、この防衛大による処分及び発表をめぐる不可解な扱いの差には、Aさんが、航空自衛隊のOBで「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人も務めた潮匡人氏の娘であることが、なんらかの影響を及ぼしているのだろうか。もしそうだとしたら、これは極めて由々しきことと言わざるを得ないだろう。
周知の通り、安倍政権では森友・加計学園問題に象徴されるように“身内優遇”に官公庁が加担し、組織的な隠蔽にまで手を染めている事実がある。くだんの防衛省でも、安倍首相や防衛大臣を忖度したとしか思えない自衛隊の日報隠蔽問題などが明るみになった。
今回の疑惑はそうした、安倍政権下で広がっている忖度体質の延長線上で出てきたものと言えるだろう。少なくとも、幹部自衛官を養成する防衛大学校が、国民からこうした疑念を持たれるようなことはあってはならない。最後にそう、念を押しておこう。
(編集部)
最終更新:2018.09.23 10:08