そうしたことから、神社界では、大損の取引となった職舎売却問題に田中総長・打田会長派が絡む“背任行為”があったのではないかとの疑義が向けられ、神社本庁の役員会でもディンプル社への不動産売却(転売)の妥当性に疑問の声があがっていた。
そんななか、事態の深刻さを察知した神社本庁の元総合研究部長・稲貴夫氏が「神社本庁の正常化」を呼びかける檄文を当時の小串和夫副総長や理事に手渡すなど、不正疑惑を正す行動を始めた。そして、2017年6月にはこの不動産不正売却疑惑を「ダイヤモンド・オンライン」がスクープ。2億円近い資産が闇に消えた不可解な事実が明るみに出たのである。
ところが、これに対する神社本庁の姿勢は不誠実極まりないものだった。神社本庁理事の國分正明・元文部事務次官を委員長とする調査委員会を発足させたのだが、同年7月、“職舎の売却は妥当だった”と結論づける報告書を提出したのだ。
このすぐ後には、調査委員会の責任者である小串副総長が辞任。小串氏はこの件についてメディアの取材には応じない姿勢とされるが、「田中総長に対する“抗議”としての辞任ではないか」(複数の神社界関係者)との見方も強い。
しかし、これを受けた田中総長を中心とする役員会は「調査報告書で全てが片付いたと言わんばかり」(神社本庁関係者)に振る舞い、同年8月、疑惑の解明と神社界の信頼回復を訴えた前述の稲氏を「神社界全体の信用を著しく傷つけた」等の理由で懲戒免職に。また、田中総長らからディンプル社と契約するよう圧力をかけられたと主張している瀬尾芳也・元教化広報部長も減給降格に処したのである。
明らかに内部からの不正追及の動きに対する“報復”だが、稲・瀬尾両氏はこの処分を不服として、昨年10月、神社本庁を相手取り、処分無効を求めて東京地裁へ提訴した。
そして裁判のなかで、田中総長と打田会長の周辺が、ディンプル社への職舎売却をゴリ押ししていたことが明かされていく。