そもそも藤井氏は、「論破プロジェクト」なる団体の代表を務めている人物。ホームページで〈日本をおとしめる自虐史観や、嘘と誤解に満ちた歴史観を払拭することが目的です!〉と息巻く通り、海外などに出かけて歴史修正の運動をしている団体だ。
2014年1月にはフランスで開催された「アングレーム国際漫画祭」に“従軍慰安婦の強制連行はなかった”と主張する漫画を持ち込み、会場のブースには「従軍慰安婦?どのようにフィクションが真実となるか?」「慰安婦についての討論 性奴隷か売春婦か?」などと書かれた垂れ幕を展示しようとした。結果、主催者側から政治的な宣伝およびその内容が歴史的事実の否定を禁止する法律に触れるとの理由で、出展を禁じられている。
なお、「論破プロジェクト」には宗教法人・幸福の科学が支援していたという報道もあり、当時の「週刊新潮」(新潮社)や「週刊ポスト」(小学館)によれば、幸福の科学広報部は「論破プロジェクト」の漫画の仏語翻訳に協力したことを認めている。また、幸福実現党から選挙に出馬もしている信者でミュージシャンのトクマ氏は「週刊新潮」の取材に対して、藤井氏は幸福の科学の会員であると述べている。
いずれにせよ、藤井氏は以前から海外で慰安婦問題の否定などの歴史修正主義運動を展開してきたわけだが、先に触れたように、安倍首相の子飼い政治家との懇ろな関係も明らかになっている。
たとえば、安倍首相のラブコールで自民党衆院議員となり、例の“生産性がない”発言が大きな問題となっている杉田水脈議員だ。いま、杉田氏が昨年6月9日にTwitterにアップした藤井氏とのツーショット写真が話題になっているが、これは同月、スイスの国連欧州本部で開催された国連人権理事会に藤井氏と杉田氏が仲良く参加したときのもの。この人権理事会でも藤井氏は慰安婦問題を矮小化するスピーチを行なっていた。
また、産経新聞によれば、杉田氏は「韓国政府は日本たたきのためにネット上に捏造した歴史やプロパガンダを拡散するための半官半民組織に資金を拠出し、扇動している」などと訴えたという。杉田議員もツイートで藤井氏をサポートしたことを書いていたが、いわば歴史修正運動で一体化しているお仲間というわけだ。
ちなみに杉田議員は過去に、慰安婦像について「慰安婦像を何個立ててもそこが爆発されるとなったら、もうそれ以上、建てようと思わない。立つたびに一つひとつ爆破すればいい」(『「歴史戦」はオンナの闘い』PHP研究所)などと、今回の件に通じるような発言をしたこともある。
杉田議員だけではない。こちらもまた安倍首相のお気に入りである自民党広報副本部長・和田政宗参院議員も藤井氏と昵懇の仲であり、2015年には『村山談話20年目の真実』(イースト新書)という共著まで出している。
和田議員は藤井氏や「新しい歴史教科書をつくる会」元会長の藤岡信勝氏、元次世代の党衆院議員の田沼隆志氏とともに「村上談話検証チーム」なるものを結成、同書の後半には彼らの鼎談が収録されている。和田氏が、安倍談話に「侵略と植民地という事実ではない文言により、多くの国民に多大な損害と苦痛を与えました」と入れるべきなどと提案すると、藤井氏らが「(大笑)」するなど、グロテスクな歴史修正主義がむき出しだ。