実際、安倍首相はいまだこの杉田発言について沈黙しているが、安倍周辺の自民党政治家からは杉田を批判する発言が出ている。代表的なのが稲田元防衛相だ。稲田は先日、朝日新聞の取材に対して、「(同性カップルは)子供を作らない、つまり『生産性』がない」と切り捨てることは、性的指向と性自認の理解増進に取り組む自民党の方針に反している」などとコメント。さらには7月24日に急遽Twitterのアカウントをつくって、こんな投稿をした。
〈平成28年2月、自民党政調会長だった私は、LGBTの方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、特命委員会を立ち上げた。今、この委員会ではLGBTの理解増進のための議員立法の作業中だ。私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが「保守」の役割だと信じる。〉
騙されてはいけない。そもそも稲田といえば、「性役割」を押し付ける家父長制的発想の推進者であり、いわゆる「ジェンダーフリー」バッシングの急先鋒。本サイトではなんどか取り上げてきたが、稲田は男女共同参画社会基本法や選択的夫婦別姓制度の法制化、婚外子の相続格差撤廃などに猛反対、こんな性役割の固定化を強要する差別発言を連発してきた。
〈夫婦別姓は家族としてのきずなや一体感を弱め、法律婚と事実婚の違いを表面的になくし、ひいては一夫一婦制の婚姻制度を破壊することにつながる〉
〈「多様な価値観」を突き詰めて、同性婚、一夫多妻、何でもありの婚姻制度を是としてよいのか。例外を法的に保護すれば、法の理想を犠牲にすることになってしまう〉(毎日新聞2007年1月8日付)
〈家族を特別視しない価値観が蔓延すれば、地域共同体、ひいては国家というものも軽んじるようになってしまいます。帰属意識というものが欠如して、バラバラの、自分勝手な個人だけが存在するようになるでしょう〉(「月刊日本」08年3月号/ケイアンドケイプレス)
ほかにも、2007年7月の「別冊正論」(産経新聞社)では、〈そもそも「ジェンダー」とは何か。内閣府は「ジェンダーフリー」はいけなくて「ジェンダー」は男女共同参画を推進するうえで重要な概念であるという。(中略)しかし、それでも私にはなぜ、あえて「ジェンダー」という言葉が大切なのかがわからない〉としたうえで、こんな風に主張している。
〈〈ジェンダーとは「社会的・文化的に形成された性別」である。国の第二次基本計画では「文化的」という言葉が削除された。自民党の議論の中で「男らしさ」「女らしさ」の区別にもとづく鯉のぼり、ひな祭りなどの日本の伝統文化を否定するのかという批判が相次いだからである。
しかし「文化的」という言葉を削除したことで問題は解決したのだろうか。「社会的性差」を否定することは、すなわち「男らしさ」「女らしさ」を否定することに他ならない。
「生物学的性差」とは男と女であり、「社会的性差」とは「男らしさ」「女らしさ」だからである。〉
〈そして何よりも「ジェンダー」という概念を認めるということがすなわち社会的に男女が平等に扱われていない、支配者たる男と被支配者たる女の階級闘争というイデオロギー運動なのである。〉