さらに、今回の女性が着ていたものとまったく同じTシャツを着用して歩いていただけで、警察から詰問された人物までいる。ラジオDJのピーター・バラカン氏だ。
バラカン氏は2015年10月16日、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組『The Lifestyle MUSEUM』(TOKYO FM)で、その日スタジオに向かう途中、こんな経験をしたと語っていた。
「めずらしく広尾のほうから六本木に向かって有栖川公園の脇を歩いていると、まずひとりの警官にちょっと、変な目で見られて(略)。もうちょっと先を歩くと、中国大使館のすぐ手前のところで2人の警官に、止められました。『あれ? どうしたんですか?』と言ったら、『いや、あの今日これから抗議をする予定ですか?』と聞かれたんですね。ん?いや、特にそんなことはないと『なぜそんなことを訊くんですか?』と言うと、『9条のTシャツを着ているから』と」
何度も言うがTシャツにプリントされているのは「No .9」「NO WAR」「LOVE & PEACE」という文字であって、「アベを殺す」とか「国会議事堂を爆破する」というような“過激な”メッセージではない。にもかかわらず、街で警察に職務質問され、国会の傍聴まで制限されるのだ。これは憲法で保障された「表現の自由」に反するだけでなく、もはや、戦中に政府が特高警察によって市民を社会主義者や反戦主義者という“思想犯”に仕立て上げて取り締まった歴史が繰り返されようとしている証拠だろう。
そして、この過剰な「憲法9条」の取り締まりの背景に、安倍首相が推し進める憲法改正への忖度があることは明白だ。
9条と平和主義を“危険思想”扱いして排除する。その動きを強化させていくことで、社会には「『9条を守れ』と言う人は危ない人物」という認知が広がる。ネット上ではすでに「戦争反対」と訴えることや「平和」を願うことをネトウヨたちが「反日」認定するという状態に陥っているが、このままでは一般社会でも「9条に触れてはいけない」という空気が広がっていくだろう。そして、それこそが改憲に向けた安倍自民党の狙いでもあるのだ。
当時バラカン氏は「ちょっとこの国、もしかしたらちょっとおかしな方向に行き始めているんじゃないかな」と述べていたが、まさにその指摘どおり、事態は深刻度を増して進んでいるのである。
(編集部)
最終更新:2018.07.04 08:19