小選挙区比例代表制による安倍一強体制によって自民党内に反発が起きることなく、政府・与党のどんな横暴も看過されてしまうなか、「政府の誤りを正す」という野党の仕事は重大さを増すばかり。なのに、国政の責任を負う政府や与党の対応を棚上げし、責任を野党に転嫁していては、小泉氏の言う「近い将来に同様の事案が発生」することは間違いない。
しかし問題は、小泉氏の本質を無視した、上滑りな「改革」に国民が騙されてしまう、という点にある。そして、その原因をつくり出しているのは、メディアだ。
メディアは安倍政権の無責任さや国会の軽視といった暴挙を批判的に報じず、「与野党の攻防」「議論は平行線」などという実相を反映しない言葉で片づけてきた。とくに高プロ制度の創設は過労死を促進しようとしているとしか考えられない中身であり、働く人びとすべてに直結する問題点を反対野党はいくつも指摘してきたが、加藤勝信厚労相は木で鼻をくくったような態度に終始。そうした国民の命を命とも思わない無責任な答弁を取り上げるメディア、なかでもテレビ番組はごく一部だけだった。それは、森友・加計問題も同じだ。
他方、小泉氏の「国会改革」については、「BuzzFeed Japan」が古田大輔編集長の文責で「モリカケで政策議論ができない国会 小泉議員ら自民若手が画期的な改革案」と題して紹介する始末。「政府・与党が隠蔽をいまだに繰り返し、不誠実な答弁ばかりでモリカケの真相解明が一向に進まない」だけなのに、「モリカケ疑惑ばかり」という小泉氏らの主張を無批判にトレースしたのだ。
メディアがこんな体たらくでは、責任の所在が野党にすり替えられたまま、小泉氏が「ガス抜き」に立ち回り、国民が「だらしない野党」などと言っている間に、安倍首相は総裁選で難なく3選を果たすだろう。だが、繰り返すが、「空転する国会」とメディアが表現するその「空転」とは政府がもたらしているものだ。「改革」が必要なのは国会ではない、政府・与党だ。
(編集部)
最終更新:2018.07.01 09:04