まったく、この間のアピールは一体何だったのかと聞きたくなるではないか。
当然、そこで記者から「拉致問題について合意文書に触れられていませんが」と呼び止められたのだが、すると安倍首相はやや苛ついた調子で「合意文書については米側から説明がすでにあったとおり」と言い、「米国大統領が金委員長に対して直接言及、提起したのは初めてのこと」と繰り返し強弁しただけだった。
また、安倍首相は昨日夜のトランプ大統領との電話会談後の会見でも「私の考えについては、トランプ大統領から金正恩委員長に、明確に伝えていただいたということ」と強弁する一方で、「やり取りについては、今の段階では詳細について申し上げることはできません」と言っていたが、これは完全にゴマカシ。実際には、金正恩大統領から“拉致問題についてはゼロ回答”だったことをトランプ大統領から伝えられたため、「そもそも詳細がない」だけだったのはミエミエだ。
全国紙の官邸担当記者が苦笑しながらこう語る。
「いま、萩生田(光一・自民党幹事長代行)さんがマスコミに『金委員長は「解決済み」とは言わなかった』という情報をしきりに流していますが、仮にそうだったとしても何も言ってもらえなかっただけでしょう。どれだけハードルを下げてるんだ?という話です(笑)。しかも、発言の主は萩生田さんですからねえ。実際は『解決ずみ』に近いゼロ回答の反応を伝えられたのに、それをごまかすために真偽不明の情報を流している可能性もある」
「ゼロ回答」にもかかわらず、トランプ大統領に平伏し、恥知らずにも「感謝」を連呼する安倍首相に、本当に拉致問題を解決する気があるのか。ようは、実際には何も進展していないのに、「提起」という言葉だけをとって“自らの手柄”にし、最大限に政治利用しようとしているだけではないか。
拉致被害者の曽我ひとみさんは、メディアに向けたコメントのなかで「結果は何も出ませんでした」「もっと具体的な答えを引き出してほしかった」として、「とても残念としか言えません」と失望を表明しているが、あまりに当然の反応だろう。