しかし、この本の中身のなかでいちばん驚いたのは、昨年5月の段階で青山が〈昭恵夫人と軽く話をする機会を得〉て、昭恵夫人のコメントをとっていたことだ。昭恵夫人は、青山にこう話したという。
「籠池夫妻は本当にしつこくて大変だったの。結構電話は掛かってきていたけど、出たのは全部で3回くらいなのよ。私もいろいろ外で話したいんだけど今はちょっと出られないわね。森友学園の子供たちはかわいそうね。本当にきちんとした子供たちだったわ」
「あの人たち(籠池夫妻)のことは、今も『祈って』いるんだけど」
さすがの青山も昭恵夫人が「祈る」というパワーワードを口にしたことに〈反応に苦慮〉したというが、問題は、こうした昭恵夫人の発言を日テレが報じていないことだ。昭恵夫人はこれまで一度もメディアの前で森友問題について語っていない。もし、昨年5月に「籠池夫妻はしつこくて大変だった」「森友学園の子どもたちがかわいそう」「いまも祈っている」などという無責任発言が報道されていれば、スクープであると同時に、昭恵夫人に対する責任追及の声はより高まっていただろう。つまり青山は、報道にたずさわりながら「国民の知る権利」を無視して、総理夫人の発言を黙認することで批判から守ったのだ。
いや、昭恵夫人の発言だけではない。本書のなかには、“モリカケ隠し解散”の際に、安倍首相が「ああいった国会審議を続けてもしょうがない」と開き直っていたことや、加計問題でも、「前川の行っていた歌舞伎町の店はひどい店らしいね。青山さんも行ってみたらいいんだよ。とても女の子と普通に話をしたり、『実地調査』をするような店じゃないらしいから。前川はそんなところに何回も何回も行って、おかしいだろ」と言い、前川喜平・前文科事務次官のデマの醜聞を自ら広めていたことが描かれている。しかも、首相周辺が「彼がやっているのはテロじゃなくてエロだ」と言うと、安倍首相は笑っていた、とさえいう。こうした情報を青山は隠して、安倍首相を擁護するような解説をおこなってきたのだ。
そして、本書でも、青山は〈政権打倒のために森友・加計問題ばかり追及する野党に、感情的に反発して冷静さを失う官邸〉などと、野党がモリカケをしつこく追求するために安倍首相および官邸が感情的になってしまっていると“野党のせい”にして、〈安倍はどのようにこの難局を乗り切るのか〉と述べるのだ。
このように、政権に都合のいい情報しか出さず、報道に圧力を加えられても「一理ある」などと頷いてしまう“政権の腹話術人形”がキャスターを務めることになるのか──。もし青山がキャスターとなれば、安倍首相がコントロールできる贔屓番組として生出演がおこなわれるようになるだろうが、そのとき、有働キャスターは一体どんな反応をするのだろうか。
(編集部)
最終更新:2018.06.09 01:38