国民に対して「真実をあきらかにしよう」という気がまったくない基本姿勢や、籠池夫妻を「変な相手」として扱うことで正当性の根拠にしようとする蛯名局長の提案には呆れるが、ここで太田理財局長は財務省としてではなく、開き直ることが官邸=安倍首相にダメージを与えることにならないかを心配しているのである。
さらに、太田理財局長は、こうも語っている。
「『捜査中なのでコメントできない』だけではもたないし、マイナスのイメージを拡大させてしまうと思う。佐川局長が価格交渉をしたのかどうかが追求のポイントだが、民進党PTはこれまで通りの対応をするが、国会ではなんらかの答弁が必要なので、官邸との関係は容易ではないと思うが、来週にも調整したいと思っている」
官邸との関係は容易ではないが調整したい──。つまり、財務省の国会答弁は官邸と緻密に調整した上で作成されていた、というわけだ。「価格交渉をしたのかどうかが追求のポイント」とまで述べているのだから、当然、交渉記録の破棄を官邸が知らなかったなどということは、この口ぶりからはまずもって考えられないだろう。
そして、極めつきはこの発言だ。
「検査院に対しては官邸だからといって通用しない。説明していくタイミングも考える必要がある。両局長が官邸をまわっている姿をマスコミに見られるのはよくない。まずは寺岡を通じて官房長官への対応するのが基本。与党へもいずれは何らかの対応が必要だろう。相手は検査院なのでこのような報告が出てしまうのはしかたがないとの認識を持たせていくことが必要」
「寺岡」というのは寺岡光博・官房長官秘書官のことを指していると思われるが、これは官邸、菅義偉官房長官ぐるみで、会計検査院の報告や国会対応をどうごまかすか、文書隠蔽の相談を図っていたことを裏付ける発言だ。
そして、とくに注目すべきは、「相手は検査院なのでこのような報告が出てしまうのはしかたがないとの認識を持たせていくことが必要」という言葉だ。これは、裏を返せば、官邸から「会計検査院の報告をどうにかしろ」と迫られていたことを示しているのではないか。
現に、当時、国交省は会計検査院対策のためのプロジェクトチームまでつくり、会計検査院が検査結果公表前に国交省に提示した報告書原案に対し、ゴミの撤去費の試算を例示することを撤回するよう要請することをまとめたり、この意見交換のなかでも、蛯名航空局長が「総額を報告書から落とす」と言えば、太田理財局長は「「金額」よりも「トン数」のほうがマシ」と応じるなどと検査結果に介入することを協議していた。だが、それでもどうにもできない部分が出てくることが予想されたため、「このような報告が出てしまうのはしかたがないとの認識を(官邸に)持たせていくことが必要」と太田理財局長は述べたと考えられるのだ。
この意見交換では、太田理財局長は「政権との関係でデメリットも考えながら対応する必要」などとも述べている。麻生財務相は調査結果公表後の会見で、文書の改ざんや記録の破棄がなぜおこなわれたのかという動機を尋ねられ「それがわかりゃあ苦労せんのですよ」などと言い放ったが、意見交換時の太田理財局長の「官邸との関係」「政権のデメリット」という言葉を見れば、その答えはもう出ている。今後は、安倍首相の代理人として立ち回っていた今井首相秘書官や、菅官房長官と財務省をつないでいた寺岡官房長官秘書官の動きにメスが入るときだ。
(編集部)
最終更新:2018.06.06 10:04