自由民主党HPより
日本大学のアメフトタックル問題で「危機管理学」がにわかに注目されている。周知の通り、日大には危機管理学部なる珍しい学部があるのだが、タックル問題での日大上層部の対応のお粗末さが満天下に示されるや、「危機管理学部があるのにまったく危機管理ができていない」というツッコミが相次いだのである。
だが、そうしたツッコミはちょっと的外れかもしれない。というのも、2016年に新設された日大危機管理学部が教育の目標に掲げている学問領域は、犯罪やテロに対するセキュリティ、国際紛争や戦争に対するセキュリティ、災害や大規模事故のマネジメント、情報セキュリティの4つ。「危機管理」といっても、企業のリスクマネジメントや不祥事対応などではなく、保守論壇誌で櫻井よしこサンや日本会議系の極右学者が叫んでいる「国家の危機管理」がメインなのだ。
そのことは、教授陣の顔ぶれからもうかがえる。現在、日大危機管理学部には20人の教授がいるが、実に約半数にあたる9人が官僚出身。しかも、そのほとんどが、警察、公安調査庁、自衛隊など、治安組織のOBである。
たとえば安部川元伸教授は公安調査庁で37年勤務し、東北公安調査局長も務めた。太田茂教授は検察出身で法務省司法法制課長などを歴任。金山泰介教授は元警察官僚で内閣安全保障室参事官補や警視庁公安部参事官等の経験がある。川中敬一教授は総理府(現・内閣府)でキャリアを積んだ。河本志朗教授は外務省への出向経験もある元警察官。木原淳教授は元防衛官僚。茂田忠良教授は警察庁出身で内閣官房にも勤務した。髙宅茂教授は法務官僚で入国管理局長などを歴任。吉富望教授は元幹部自衛官(最終階級は陸将補)で内閣情報調査室での勤務経験もある。
ようするに、日大危機管理学部は、一部のメディアから指摘されているように、警察、公安、自衛隊出身者の「天下り学部」になってしまっているのだ。不祥事対応どころか、不祥事を力ずくで隠蔽しようとしてきたお役所出身の官僚たちが教授では、民間組織のリスクマネジメントに何の役にも立たないのは当然だろう。
それどころか、こんな顔ぶれでは、学問というより、自分たちの出身省庁の利害の代弁に陥ってしまう危険性さえある。警察官僚や公安庁、防衛官僚たちが自分たちの省庁の権勢拡大と予算拡大のためにありもしない危機を煽ってきたことは周知の事実だが、そうした省庁のOBが教員になることで、その手法がアカデミズムの場にもち込まれかねないだろう。
だが、「危機管理学」のこうしたありようは何も日大だけではない。本サイトが調べた限り、危機管理学部が設置されている大学は日大を含めて3校。残る2校は、加計学園が運営する千葉科学大学と倉敷芸術科学大学なのだが、こちらにも同じような構造がある。
というか、危機管理学部は、むしろ加計学園が原型で、しかも、言い出しっぺは安倍首相らしいのだ。