しかし、十数年前ならいざしらず、暴力団排除条例が施行され、コンプライアンスが重視されるこの時代に、なぜ、こんな人物が問題にならずに、大学トップの椅子に座っていられるのか。
実は、その理由は田中理事長の警察人脈にあるといわれる。日大は伝統的に警察への就職が多いことで知られるが、田中理事長はさらに政界や警察トップと直接的に関係を築いてきた。警察官僚出身の亀井静香・元衆院議員、國松孝次・元警察庁長官、野田健・元警視総監などとは非常に親しい関係にあるという。
しかも、田中氏は最近になって、警察とのパイプをさらに磐石にする装置をつくっていた。それは、今回の一件で「危機管理学部があるのにまったく危機管理がなっていない」などと揶揄されている危機管理学部だ。ちなみに危機管理学部は、この日大を含め日本で3校にしかないが、後の2つは加計学園が運営する千葉科学大学と倉敷芸術科学大学だ。
それはともかく、2016年に新設された日大の危機管理学部には大きな特徴がある。それは、専任教員に各県の県警察本部長、内閣情報調査室内閣参事官、元内閣官房、公安調査庁など警察エリートがずらりと並んでいることだ。
日大の不正体質を追及する月刊誌「FACTA」2016年5月号(ファクタ出版)によると、危機管理学部は〈田中氏は、警察庁、法務省、防衛省、国土交通省のサポートを受けることで、文系初の危機管理学部の体制を整えることに成功した〉もので、〈その本質は「国家権力に恩をうる『天下り学部』」だと指摘している。
ようするに、田中理事長は警察の天下り先を用意することで、さらに権力を磐石にしてきたのだ。
実は、日大では田中理事長以前から、闇社会に太いパイプをもち、金銭スキャンダルにまみれた人間が経営を牛耳るというのがパターンになっていた。1960年代の日大闘争では、大学当局がヤクザや右翼学生を金で雇い左翼学生鎮圧に動いたことは有名だし、総長、理事長選挙などでは現ナマが飛び交い、対立候補に対する暴力的な脅し、怪文書攻撃なども繰り返されてきた。
しかし、そのなかでも、暴力団と警察をバックにした田中理事長の強権的支配は、“日大の帝王”と恐れられた古田重二良理事長時代にも匹敵するものだ。そして、その田中理事長の片腕として、手腕を振るってきたのが、他でもない今回のアメフト事件を引き起こした内田前監督だった。
内田前監督は昨年、日大陸上部のコーチが不倫を報じられた際、陸上部の助監督を「田中理事長に汚点をつけたとして、パンチでボコボコに殴る蹴るの大立ち回りを演じた」と前述の敬天新聞などでも報じられているが、こうした暴力的なやり口で学内を黙らせてきた。
そして、こうしたトップの体質が組織全体に広がり、日大は学内でパワハラやアカハラ、暴力団との癒着などが横行する状態となってきたのだ。
そういう意味では、今回のアメフト部の事件はたんに一部活動の不祥事でなく、日大の体質が生んだ、起こるべくして起きた事件と言っていいだろう。
だが、これまでと決定的に違うのは、アメフト部の悪質タックルが大騒動になったことによって、国民の批判が日大の体質にまで集まり始めたことだ。
本日午後、大塚吉兵衛学長が緊急会見を行ったが、真相解明も責任追及もいっさい進展はなかった。何より、本当の大学トップである田中英壽理事長はいまだ公の場に姿を見せていないままだ。
日大はこれを機会に、過去から綿々と続いてきたダーティな体質を一層し、大学が本来あるべき姿に戻るべきではないのか。
(編集部)
最終更新:2018.05.26 12:23