じつは、ネトウヨたちが唱えてきた「獣医師会の圧力によって1校限りになった」という情報の大元は、獣医師会が2017年1月30日に発行したメールマガジン「会長短信 春夏秋冬」の文章だ。そこには〈できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方〉に働きかけをおこなったこと、そして〈皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました〉と書かれていた。
しかし問題は、獣医師会が「1校限り」にするためのロビー活動をおこなった時期だ。じつは、この文章では、獣医師会がロビー活動を展開したのは文科省が獣医学部新設を容認する告示見直しについてパブリックコメント募集を実施した〈(2016年)11月18日から12月17日までの1カ月間〉だと書かれているのである。
さらに、獣医師会から働きかけを受けた山本大臣自身が、国会でこう答弁している。
「昨年の12月8日に日本獣医師会から一校とするよう要請がありまして、その後も何度も、ぜひ一校に絞ってもらいたいという要請が強くあった」(2017年7月10日衆院文部科学委員会内閣委員会連合審査会)
「12月8日に正式に文書で獣医師会から、撤回が無理なら一か所、一校に限るようにしてもらいたいという要請がございました」(7月25日参院予算委員会)
一方、山本大臣が京都府の山内副知事に「経過もあり1校しか認められない」「難しい状況なので理解してほしい」と述べたのは、前述したように2016年10月24日のこと。──つまり、安倍首相や山本大臣、八田WG座長らは「獣医師会から強い要請があって『1校限り』とした」と主張してきたが、実際は、獣医師会がロビー活動をおこなう前から山本大臣は「1校限り」と明言していたのである。