WOWOW制作のドキュメント『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説~』には、『風立ちぬ』を観たあと、高畑が静かに興奮した様子で「人がくる……うんと宣伝したほうがいい。面白いもん」と語る場面がおさめられている。宮崎、高畑の特異な関係性を利用(!?)してふたりの巨匠を巧みにコントロールしてきた鈴木は、「宮さんはじつはただひとりの観客を意識して、映画を作っている。宮崎駿がいちばん作品を見せたいのは高畑勲」と断言しているが、はたして、宮崎はこの高畑の『風立ちぬ』に対する素直なつぶやきをどんなふうに受け止めたのだろうか。
ちなみに、宮崎はご存じの通りすでに引退宣言を行っているが、じつはその引退記者会見の直前に制作中だった『かぐや姫の物語』を観て、宮崎は突然、態度を変えたのだと鈴木は言う。それまでは引退発表に前のめりだったのに、「なんで俺、引退記者会見やるんだよ」「俺は全面引退なんて言ってないよ」と言い出したというのだ。
一説には、高畑は「平家物語」の映画化に意欲を示しているとも囁かれているが、そうなれば宮崎が黙って見ているはずがない。ジブリ復活の鍵は、やはりまだまだこのふたりが握っているのだろう。
(大方 草)
最終更新:2018.05.16 04:51