「辞めますと言ったのに、辞めさせてもらえない」こんな相談が最近とても多い印象だ。
法律上は、労働者が退職の意思表示をしてから14日で退職の効果が生じることになっているので、会社や上司がなんと言おうが、「辞めます」と言って14日経てば退職したことになる。なので、実は15日目から出社しなければいいだけなのだが、最近はそう単純ではないケースが増えている。「辞めたらお金を請求する」と言って労働者をビビらせて退職を思いとどまらせようとする会社があるのだ。
Aさんは広告代理店勤務のデザイナーだった。連日の残業で体調を壊し、医師から休職の指示を受けた。
そこでAさんは会社に退職を申し出たのだが、会社は体調を崩しているというAさんの言葉を信用しなかった。そして、
・後任社員が採用されるまで、理由の如何に関わらず出社拒否などせず通常業務に従事すること
・後任社員が採用された後に引き継ぎをおこなって、会社と協議・合意の上で退職日時の確定すること
・違反した場合は、後任社員の募集広告費や募集・採用に費やされた役員の経費、新入社員の研修・人材育成に費やされた経費、Aさんが退職することによって失った利益などについて、損害賠償を請求されても異議を述べない
といった条項の入った退職合意書をつくって、Aさんにサインさせた。
しかし後任社員に引き継ぎが終わってからの退職といっても、その後任者はこれから募集するので、いったいいつ見つかるのかわからない。これではいつ退職できるのかまったく予測できない。しかも引き継ぎが終わる前に退職や休職をしたら多額の損害賠償を受けることになるというトンデモない内容である。