「蚊帳の外」感がここでも浮き彫りになるようだが、極めつきは岡田充・共同通信客員論説委員のレポートだ。「ビジネス インサイダー ジャパン」が27日に配信した氏の記事によれば、日本政府は米朝首脳会談の実施が決定して以降、〈日朝首脳会談を希望する安倍首相の意向を、さまざまなチャネルを通じ北朝鮮に伝えた〉ものの、「意向を平壌に伝達したが、本国からは『一切とりあうな』と指示された」と北朝鮮情勢に詳しい在京消息筋が明かしている。
その上、朝鮮中央通信は28日、日本政府の対応について、このように厳しく非難した。
〈朝鮮半島と地域に流れる平和の流れをきちんと感知できない〉
〈急変する情勢下で朝鮮民族や国際社会の願いは眼中になく、自分たちの利害ばかり計算している〉
〈南北の同胞はもちろん国際社会も、対話ムードを壊そうとする行為を決して許さないだろう〉
ようするに、米朝首脳会談の開催決定で焦った日本政府は取り残されないために必死になって日朝首脳会談の実施に動いたが、それもすべてなしのつぶて。「圧力」一辺倒の外交によって、北朝鮮に「平和の流れをきちんと感知できない」などと言われてしまう事態に陥っているのである。これを「外交の大失態」と呼ばずして何と言おう。
そして、昨日、韓国大統領府が発表したところによれば、南北首脳会談の席で金委員長は「いつでも日本と対話する用意がある」と述べたという。
この金委員長の「対話の用意がある」発言を受けて、ネトウヨたちは「安倍外交の勝利!」「やっぱり蚊帳の外じゃなかった!」などと喜んでいるが、何を言っているのだか。北朝鮮は日本が接触したくて仕方がないことを承知の上で、「対話してやってもいいよ」と言ってきているわけで、主導権は完全に北朝鮮に握られているのである。
いや、安倍首相も日朝首脳会談が実現にいたれば、「外交の成果が出た」などと自画自賛し、マスコミもそれに同調するだろう。事実、マスコミは既報の通り(https://lite-ra.com/2018/04/post-3982.html)「南北合意は不十分」「北朝鮮は信用できない」と南北首脳会談を攻撃するような報道に終始している。拉致問題を端緒とする“反北感情”で圧力重視の外交を支持するなど“愛国ヒステリー”状態に染まりきったせいで、対話による平和的解決という道筋を見失ったこの国は、安倍首相とともに、今後どんどんと対北朝鮮問題で世界から孤立していくのだろう。
(編集部)
最終更新:2018.05.01 12:26