実際、こうした竹内氏の“暴走”については、本物の「動物行動学」を研究する専門家の間からも厳しい批判が浴びせられてきた。
一例をあげると、行動生態学を専門とする粕谷英一・九州大学理学研究院准教授は、竹内氏の著作の全体的な特徴について〈動物行動学や動物の社会生物学からの学問的な根拠があるわけではない〉〈竹内の論法では人間についておよそどんな結論でも導くことが可能〉〈生物学からの議論というよりはオールドタイプの日本人論の新型とでもいうもの〉などと喝破している(「現代思想」1992年5月号/青土社)。
また、生態学の権威である故・伊藤嘉昭名古屋大学名誉教授は〈世界で一番大胆といえる社会生物学の悪用が日本人によってなされている。これをしたのは竹内久美子である〉と極めて強く批判した(『新版 動物の社会 社会生物学・行動生態学入門』東海大学出版)。
ようするに、竹内久美子氏という人はまっとうな学問の世界ではとっくに、「エセ生物学」「世界で一番の悪用」と烙印をおされている人物なのだ。
しかし、こんなトンデモ学者のトンデモ言説を保守論壇はずっと重用してきた。あげくはルベラル叩きのために“リベラル金玉小さい論”である。
こんなトンデモでも信じるバカは確実に増えている。おそらく、産経周辺では、竹内氏の珍理論を真に受けて、いや、むしろ積極的に持ち出して「やっぱりサヨクはキンタマ小さいんだよ!」などと盛り上がっているのだろう。いや、冗談ではない。そもそも、こうした論理破綻が明らかなレベルの原稿を、一応とはいえ“保守系全国紙”の産経が掲載したことこそ、「保守」の劣化の証明なのだ。
そういえば、作家の百田尚樹センセイもよくこんなツイートをしていた。〈長いこと風呂入ってないから、キンタマがかゆい〉〈キンタマがかゆいのでボリボリかいてたら、血が出た(>_<)〉〈キンタマは前からの攻撃にはわりに強い。おそらくチンチンがガードしているからと思う(ちなみに私のは大きいので、ガード能力が高い)〉……。
あまりのトンデモにあてられたのかもしれない。愚にもつかないことを思い出してしまった。気持ち悪。
(小杉みすず)
最終更新:2018.10.18 04:57