痴漢という女性を狙った男性による「犯罪」が後を絶たない。そういう状況下で鉄道会社は女性専用車両を導入しているわけだが、それはけっして根本的な解決策ではないことは言うまでもない。あくまで通学・通勤のたびに犯罪リスクに晒される女性たちに対する、最低限の安全措置でしかないのだ。だいたい専用車両は、「男性を排除」するというより被害者である女性を「隔離」するもので、痴漢を容認する対策だという批判もある。
しかし、女性専用車両に反対する者は、痴漢犯罪に遭った被害者女性の心情や、犯罪が横行する状況を軽視・無視する。それどころか、女性専用車両と同列で「レディースデー」「女性専用フロア」「女性専用マンション」といったものを挙げ、「女性優遇」「女尊男卑だ」と言う。「レディースデー」は女性の顧客開拓のサービスでしかなく、「女性専用フロア」「女性専用マンション」は痴漢と同様、性犯罪リスクに対処するための防犯が目的のもので、男性を差別しているようなものではないのだが、このようなものまで許せないと言うのは、もはや「女性に対する憎悪」しか感じられない。
男性というだけで乗車できない車両があることを「男性差別」と言うのならば、この状況をつくり出している痴漢犯罪者を憎むべきで、女性専用車両を非難するのはお門違いだ。女性専用車両に反対する前に、やれることはたくさんある。痴漢を含む性犯罪のさらなる厳罰化、警察と鉄道会社の連携強化を訴えることもできるし、男性の立場から「痴漢を犯す男は最低最悪のクソ野郎」という啓発活動を街宣することもできる。男性たちがそうして連帯してくれることを、女性たちは大いに歓迎するだろう。最後にもう一度言う。憎むべきは、痴漢犯罪者なのだ。
(田岡 尼)
最終更新:2018.10.18 01:53