実際、櫻井よしこはその舞台裏について、ネット番組『言論テレビ』のなかでこう語っている。
「安倍さんがやっぱりね、『杉田さんは素晴らしい!』って言うので、萩生田(光一・自民党幹事長代行)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田氏は)『自民党、このしっかりした政党から出たい』と」
今月22日の施政方針演説で安倍首相は「女性活躍の旗を高く掲げ、引きつづき待機児童の解消に全力で取り組みます」と威勢よく宣言したが、現実は、思想を同じくし、子育て支援を取り組ませている子飼い議員がこんな主張をおこなっているのである。つまり、安倍首相には待機児童問題を解消する気など、さらさらないのだ。
だいたい、杉田議員といえば、2014年10月には国会で「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と暴言を吐き、「週刊プレイボーイ」(集英社)でのインタビューでは、日本に男女差別は「ない」と断言。「あるとすれば、それは日本の伝統のなかで培われた男性としての役割、女性としての役割の違いでしょう」「(基本的人権が守られている上に)そこにさらに女性の権利、子供の権利を言い募ると、それは特権と化してしまう」との驚くべき前近代的主張を展開した人物。その男尊女卑に基づいた主張は、ネット上で女性バッシングに精を出すネトウヨとなんら変わりない。
しかも、いま日本が直面している子どもの貧困や待機児童の問題、あるいは少子高齢化の背景には、長く続く不況による収入の減少や、社会保障の不備による将来への不安、長時間労働の問題とならび、出産後の職場復帰がほかの先進国とくらべて難しく、社内の人事などにおいても根強い女性差別、育児は母親だけが担うべきという旧来的なジェンダー観などがある。現実問題として女性を取り巻く社会環境の向上は急務のはずだが、「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想」と言って憚らない人物が政権与党で子育て支援と少子化対策を専門にしているとは、笑えない冗談だ。