枕営業をめぐる問題も同様だ。「枕営業で売れた人間がいまさらセクハラ被害を告発するな」というのは、そういう男性が性関係強要で支配する枕営業の構造を温存したがっているとしか思えない。
しかも、公共の電波でこんな時代錯誤な女性差別丸出し言説を平気で口にするというのは、いったいどういう神経をしているのだろうか。
この反応は、アメリカの芸能界の動きとは雲泥の差だ。
今回のゴールデングローブ賞で功労賞にあたる「セシル・B・デミル賞」を黒人女性として初めて受賞したオプラ・ウィンフリーによるスピーチは多くの人の感動を呼んだ。「男性たちの力に対し、女性たちが勇気を出して真実を語っても、誰にも聞いてもらえず、信じてももらえない。そんな時代があまりにも長く続きました。ですが、そんな時代はもう終わりです。タイムズアップ! 彼らの時間はもう十分なのです」(ウェブサイト「ELLE ONLINE」より)というスピーチは、スタンディングオベーションをもって迎えられたのだ。
監督賞のプレゼンターを務めたナタリー・ポートマンは「候補者は全員男性だけどね」と一言付け加えることで男尊女卑的な映画業界に対する皮肉を込め、また、メリル・ストリープ、エマ・ワトソン、エマ・ストーンといった女優たちは、女性の権利向上を訴えるアクティビストたちを伴ってレッドカーペットを歩いた。
しかも、今回のゴールデングローブ賞の動きには、女性だけでなく多くの男性が参加していた。タキシードに黒いシャツやネクタイを身につけて授賞式に参加。ジャスティン・ティンバーレイクやニック・ジョナスなどは「TIME’S UP」と記されたバッジをジャケットに着けていたが、これは「セクハラを黙認してきた時代は終わり」を意味するセクハラ撲滅キャンペーンの運動で、このバッジを付けているということは「#TIMESUP」運動へ賛同の意志を示すことを意味している。
今回のゴールデングローブ賞が伝えようとするメッセージを知ってなお、本稿冒頭で挙げたようなコメントがワイドショーで出てくる状況には頭が痛くなるが、この国のメディアにおいての認識は、所詮その程度なのかもしれない。
こういったゴールデングローブ賞の動きと対称的なのが、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しスペシャル!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』(日本テレビ)で起きた「ベッキータイキック炎上」を受けてのベッキーの対応だろう。