アパ歴史修正問題が海外で大きな批判を浴びた一方、国内メディアとりわけテレビは腰砕けで、あろうことかアパの肩をもつ番組まであった。
たとえば1月19日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司が「イヤだったら泊まらなきゃいいわけですよ」などと、まるでアパの回し者のようにまくし立てた。他にも、同月22日の『ワイドナショー』(フジテレビ)で、安倍ヨイショ芸人と化した松本人志が「中国が国をあげてアパホテルを叩いている行為は異常」などとコメントした。
そんなか、アパの歴史修正主義を正面切ってテレビで批判したのが、評論家の宇野常寛だった。宇野氏はレギュラーコメンテーターを務めていた『スッキリ!!』(日本テレビ)1月19のなかで、「この人(元谷代表)の歴史観ってのは、もう話になんないと思いますよ」「歴史修正主義だし、陰謀史観だし。何やってんだともう呆れるしかない」「こういったトンデモ歴史観を、妄想を垂れ流して対抗するんではなくて、やはり地道な外交努力だったりとか文化交流だったりとか、そういったことによって信頼関係を築き上げていくことだけが唯一の解決法」と、至極まっとうな指摘をしたのである。
ところが、そんな宇野氏が、このアパ批判発言が発端となり、リニューアルを名目に9月いっぱいで『スッキリ!!』をクビにされてしまったのだ。
その内幕を宇野が暴露したところによれば、宇野のアパ批判放送の後、日本テレビに右翼団体の街宣車が来て大問題になり、「その結果、日本テレビの小林景一プロデューサーは、ぼくに対して『右翼批判はおこなわないように』という要求をおこないました」という。宇野氏の歴史修正主義への批判は国際社会ではごく常識的なもので、批判されるようなものではまったくない。にもかかわらず「ただ面倒を起こしてほしくないからこいつを黙らせよう」(宇野氏)という日本テレビの言論封殺姿勢は、歴史修正主義に加担しているのと同じだ。恥を知れと言いたい。
●高須クリニック院長のナチ礼賛発言が国際問題になるも、訴訟ちらつかせて弾圧
医師であり大病院経営者である高須クリニックの高須克弥院長の発言も国際問題になった。
高須院長は〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉〈ヒトラーは私心のない 本物の愛国者だ〉〈ドイツのキール大学で僕にナチスの偉大さを教えて下さった黒木名誉教授にお会いした。励まして下さった!嬉しい なう〉などといったナチ肯定のツイートを繰り返していた。
8月、これらのツイートを問題視したエストニア共和国在住の男性や、差別問題に取り組んでいる有田芳生参院議員が批判。国際社会も黙って見ているわけがなく、ユダヤ系人権団体が高須院長の発言を問題視し、アメリカの美容外科学会に高須院長を会員から追放するよう要請、イスラエルのマスコミも大々的に報じた。
だが、高須院長は、ナチ礼賛発言を指摘した男性と有田氏に対して訴訟をチラつかせて恫喝。有田氏については〈提訴するよう、指示しました。なう〉などとツイートし、実際に提訴する構えまで見せたのである。
批判者を恫喝する一方で高須院長は、〈僕の学んだドイツ医学の素晴らしさを伝えてます。ナチスのイデオロギーは好きではありません。〉〈ナチスの庇護を受けた優秀な科学者は尊敬に価する。しかし人種差別のナチズムは僕の八紘一宇のイデオロギーの対極である。〉などとツイート。ナチスのイデオロギー肯定発言をごまかしつつ、ナチス下のドイツ医学や科学への評価を明言したのだ。
しかしナチス下のドイツ医学の業績じたい、非人道的な人体実験などによってもたらされた部分が大きく、その業績だけをナチスのイデオロギーや罪と切り離して評価できるものではない。それを医師である高須院長が「素晴らしい」「尊敬に値する」などと称賛することは、重大な問題だ。
さらに問題なのは、こうした高須院長のナチ礼賛発言をめぐる騒動を、テレビはやはりネグってしまったことだ。高須クリニックが大量のCMを出稿するスポンサーであること、そして提訴をちらつかせた恫喝行為が影響を与えているのは想像に難くない。またしても、メディアの弱腰が歴史修正の蔓延に加担した格好だ。