新潟市内の原発問題のシンポでの泉田前知事(撮影・横田一)
「広島高裁(12月13日)の伊方原発差止命令に続いて、来年1月の高浜原発差止訴訟もいける。原発へのミサイル攻撃を理由にしたもので、安倍首相が北朝鮮の脅威増大を『国難』と言っているのだから、勝てる可能性は十分にあるとみている」
こう話すのは、全国各地の原発差止訴訟を手掛ける海渡雄一弁護士だ。四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差し止め仮処分申請即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)が運転差止決定を下した。福島原発事故後、原発の運転を差し止める高裁判断は初めてのこと。そのため「脱原発弁護団全国連絡会」の共同代表でもある海渡氏は記者会見で、冒頭のように勝利宣言を行ったが、今回の差止決定で浮彫りになったのは、電力業界=原子力ムラの言いなりに近い「原子力規制委員会」(更田豊志委員長)の実態と、安倍政権の危険な丸投げ・無責任体制だった。
今回の差止命令の根拠は火山のリスクだ。野々上裁判長は、熊本県の阿蘇山が過去最大規模の噴火をすれば安全は確保されないとして「火山の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するという原子力規制委員会の判断は不合理」と判断したのだ。海渡氏は記者会見で原子力規制委員会を次のように批判している。
「火山ガイドにある阿蘇山の破局的噴火(1万年に1回程度発生)で火砕流が到達した可能性は“十分小さいと評価できない”ため、『原発立地不適格』と見なしたのです。未だに規制委員会は『火山モニタリングによって火砕流噴火を事前に予知できる』と判断している。火山学者がみんな否定している論理を直していないのですが、そこに対して広島高裁からレッドカードが示されたのだと思います」
要するに規制委員会は火山のリスクを過小評価していたと判断されたわけだが、しかし過小評価しているのは火山のリスクだけではない。北朝鮮のミサイルやテロゲリラによる原発攻撃についても、規制委員会は「対策不十分」という現実を直視せず、国民の生命や安全を脅かしている。