首相官邸HPより
トランプ米大統領の右腕で、政権の最高幹部である首席戦略官を8月まで務めたスティーブン・バノン氏が来日し、NHKや民放、新聞各社が会見や講演の模様などを大々的に報じた。バノン氏といえば、大統領選ではトランプ陣営の選対トップに就任し、「影の大統領」とまで呼ばれた人物で、一部イスラム諸国からの入国を禁止した大統領令もバノン氏の発案と言われている。
周知の通り、バノン氏はオルタナ右翼(alt-right)やレイシストたちから熱烈な支持を受ける右派ニュースネットワーク「ブライトバート」の会長だ。ブライトバートは、大統領選でも「ヒラリーはパーキンソン病」「ヒラリーがピザ店を拠点に児童売買」「ローマ法王が、トランプ支援」などの大量のデマを発信、トランプ大統領誕生をアシストした。バノン氏は、米国では極右思想の持ち主として批判される一方、本人は「ポピュリスト」を自認し、CNNなどのマスコミ報道対して「フェイクニュース」との攻撃を繰り返している。
そんな“アメリカのネトウヨの首領”のような人物を、国内マスコミは政府要人として扱い、その来日中の発言を大々的に報じているわけだが、他方で、テレビや全国紙がスルーしていることがある。それは、バノン氏が安倍首相に対してこのような賛辞を送ったことだ。
「安倍首相は、私が尊敬するリーダーの一人で、そのナショナリズムは本当に素晴らしい」
「私は、大きく言って、安倍総理は“トランプ以前のトランプ”(Trump before Trump)ではないかと思っている」
ようするに、日本の首相が、オルタナ右翼の総帥的な人物から、“トランプよりもトランプらしい”と絶賛されたのである。たしかに、本サイトでも以前から指摘してきたように、自らに批判的なメディアに対し「フェイクニュース」「偏向報道」とレッテル貼りし、吊るし上げる手法は瓜二つだ。事実、産経新聞によれば、二人は初会談の際にこんな会話をしたのだという。
〈昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。
「実はあなたと私には共通点がある」
怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。
「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」
これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った。
「俺も勝った!」
トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。〉(2017年2月11日付)