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文春も報じた「慰安婦像の正体は米軍事故被害者」は完全なデマだった! 官邸とネトウヨ情報に丸乗りし印象操作

 前述のインタビューによると、たしかに、キム夫妻は大学生のころから美術家としてどんな社会的活動ができるかを考え続けてきたといい、例の米軍装甲車事件で亡くなった中学生を追悼する作品も発表している。

 だが、その作品をみると、少女像の形象とは全然ちがって、被害者のミソンさんがヒョスンさんと肩を組んで立っているというもの。少女像と比較してもかなり幼い印象であって、ミソンさんの髪型もネトウヨたちが根拠とする遺影とはまったく異なる。ようするに、少女像とは一点の類似性もない別物なのだ。

ネトウヨが「少女像は転用された」と主張する元の像の実際の姿(『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』より)


 もうひとつ加えておくと、実は、このデマについては、産経新聞の元ソウル支局長である加藤達也・社会部編集委員も、今年6月17日に行われた公益社団法人國民會館主催の講演会のなかで「慰安婦像とは別物」と明言している。同会HPにその質疑応答が記されているので引用しておこう。

 質問者「慰安婦像は、女子中学生2人が在韓米軍の装甲車にひかれる事故で亡くなったのを追悼して作ったところ、日本との慰安婦問題が出てきたので、それを今、慰安婦像にしていると聞きましたが、真実でしょうか」
 加藤氏「当時の記録を調べましたところ、米軍装甲車の女子中学生轢過事件の後にできた像と、慰安婦の像は別物です。デザインが違います。もう少し調べたいと思っておりますが、今のところ関係ないと思っています」

 何度でも繰り返すが、「少女像は別の事件の被害者をモデルにした像の転用」なる話は、ネット発のデマに他ならない。しかし、あらためて戦慄するのは、そのデマが単なるネット上の与太話に終わらず、極右界隈が真実として拡散し、ましてや「週刊文春」が「『慰安婦像』の正体を暴く!」と題して報じた、という事実だろう。

 言っておくが、あの文春が全然裏を取りきれないまま報じたことや、記事の問題部分がもともと「官邸関係者」の話から始まっていることを踏まえれば、ことはかなり重大だ。

 本サイトでは何度か伝えてきたが、文春はこれまでも官邸リークに乗った記事を数多く掲載してきた。その最たるものが、例の「週刊新潮」が追及した「山口敬之『ベトナム韓国慰安所』スクープ捏造問題」だろう。新谷学編集長の肝いり企画で安倍政権御用ジャーナリストである山口氏が執筆したこの記事は、数々の捏造が明らかになっているが、さらに安倍政権の外交を援護する目的で書かれたものだったと新潮に指摘された。実際、山口氏と政府との間ですり合せをしているメール記録という具体的な証拠も挙げられている。

 そう考えると、今回、文春が出したデタラメな慰安婦像記事の背景にも、安倍官邸がいると想定せざるを得ないのだ。政権と日本トップの週刊誌が手に手をとって、ネトウヨばりに頭の悪い情報操作を仕掛けている。悪夢としか言いようがない。

最終更新:2017.12.31 12:00

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