あるとき、彼女たちが、その列にしれっと加わらない、というチャレンジをした。たくさん従業員がいるから、数名「ハグ忘れ」があったとしてもバレることはない……というのが彼女たちの狙いである。
しかし、である。残念ながら、社長は、ハグをしていないかどうかを判別する能力に長けており、何食わぬ顔で列に並んでいなかった彼女たちに向かって「おい、お前たち。まだだったよな」と声をかけ、結局、彼女たちはハグを食らうはめになったというのだ。
意に反するハグを食らった彼女たちは、これはもう逃げようがないんだ、と悟ったという。
もちろん、男女関係なくやればセクハラが免責されるなら、たとえば、男性の部長が、女性部下だけのお尻を触ればセクハラとなり、男女全員のお尻を触れば無罪放免になるという深刻な矛盾が生じてしまうわけなので、男女全員にやればOKということはあり得ない。
したがって、社長がハグをする際に、社長側に「男女区別なくやっているから性的意図はないよ」と言ったとしても、彼女たち女性従業員側から「嫌だ」という気持ちを持たれる限り、セクハラになると言っていいだろう。
さて、こんな話を彼女たちはしていたのだが、実は、これも前座に過ぎなかった。
本当のブラック企業話はここからである。
その会社に対する残業代事件を訴訟で起こし、彼女たちと打ち合わせの際に話をするたびに、その会社のブラックっぷりをきいていたのだが、次の話は私も身震いを覚えた。
この会社では、新人研修を行っている。世間的には、会社が新人研修を行うのは、別段珍しいわけでも何でもない。
しかし、この会社の新人研修の日程は「0泊4日」だという。