トランプは会見で白人至上主義グループを明確に批判せず、世論は大反発。しかし、その後の会見でも「両者に非がある」と発言し、さらには「オルト・レフト」なる造語まで用い、“極左思想主義者たちが白人至上主義者たちに突撃した”などと主張。差別主義者と差別を許さない人々を同列に置いたこの発言には、アメリカ国内のみならず世界から非難の声があがった。
たとえば、イギリスのメイ首相は「ファシズムの考えを表明する者とそれに反対する者とを同列には置けない」と明確にトランプを否定。同じくイギリスのガーディアン紙は「多人種社会で選挙によって選ばれた指導者として、受け入れられる行動と受け入れられない行動を分ける線を意図的かつ衝撃的に越えた」、フランスのル・モンド紙も「反人種差別運動と極右を同列視することで、前例のない侵害を行った」と社説でトランプ大統領の発言を批判した。
トランプ大統領への危険性を指摘する声は、差別的言辞だけではなく、対北朝鮮政策でも同様だ。国連総会の演説で「北朝鮮を完全に破壊する」とトランプ大統領は述べたが、これにはドイツのメルケル首相が「こうした警告には賛同できない」「いかなる軍事行動も完全に不適切であると考えており、ドイツは外交的な解決を主張する」と批判。フランスのマクロン首相は「対話の道を閉ざすことはしない」として外交的解決を強調した。
こうしたトランプ大統領に対する世界の首脳やメディア、市民の反応はいたって当然のものだ。しかし、かたやこの国はどうだろうか。トランプ大統領の差別を容認する発言を問題視することもなく、トランプ大統領のゴルフの腕前だの、鉄板焼きの和牛ステーキを食べるらしいだの、取り上げるのは「おもてなし」の話題ばかり。トランプ大統領の北朝鮮に対する強硬姿勢こそが緊張を高めている最大の要因であって、アメリカ国内では上院議員が先制攻撃を阻止する法案を提示するなどの動きが出ているが、今回の来日で安倍首相はトランプの先制攻撃をとどまらせるべきという当たり前の主張はほとんど見られない。
いや、トランプ批判など、国内メディアにはできないのだろう。それはイコール、安倍首相への批判となるからだ。