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『ユニクロ潜入一年』横田増生インタビュー

離婚で姓を変えバイトに潜入…ユニクロと闘うジャーナリストが語った巨大企業のブラック体質と柳井社長の洗脳

──『ユニクロ潜一年』では潜入アルバイト生活を通し、ユニクロの独特な体質や問題点が数多く指摘されています。

横田 ユニクロの問題は柳井さんによる完全なるトップダウンと、現場の低賃金の過重労働、そして秘密主義とマインドコントロールですかね。実際、働いていてしんどい会社でした。肉体的にも精神的にも。普通はいくらアルバイトでも少しは気を抜く時間があるものですが、ユニクロにはない。常にインカムをつけているので、少しでも手が空けば「●●して!」という指示がいつでも飛んでくる。ずっと緊張して根を詰めて働くんです。「感謝祭」といってユニクロ最大のイベントセールでは、レジが長蛇の列になり8時間もぶっ続けでレジを打つ。ですから、学生などはすぐに辞めることも多い。この前、働いていた新宿のビックロに行ったら、顔がガラッと変わっていました。正直言ってきついし安い給与のバランスがあまりに悪い。
 一方で、“ユニクロ教”にはまる人もいます。「休憩するのは怠け者」、「時給泥棒だ」という文化を植え付けると同時に、「ユニクロで働ける人はできる人だ」という優越感を巧妙にインプットもされる。そのための素敵なネーミング、マジックワードが用意されている。たとえば店長は“主役”ですし、他にも“知的労働者”とか“一人一人が主役だ”、“みんなに達成感を味わおう!”など標語を連発する。
 柳井さんの好きな言葉に“少数精鋭”というのがあります。現場でも「自分たちは少数精鋭だ」と葉っぱをかけられ、「できる俺」みたいに洗脳され、マインドコントロールされる。「給料は安いいけど、やりがいがあるんだ!」と。「その作業何分でできるんですか?」なんて上から目線で私に指示する“ユニクロ教”学生もいました。システム的にも軍隊みたいで、上から言われたことをやりさえすれば評価される。これは人件費を切り詰め、長時間労働させられる“やりがい詐欺”だと思っています。急成長したのも儲かるのも、柳井さんが“人は使い捨て”という考えで、かつ “ケチ”だからというのが結論ですね。

──しかし柳井社長は日本屈指の大金持ちですよね。今年「フォーブス」が発表した「日本長者番付2017」で柳井社長はソフトバンクの孫正義社長に次いで、第2位。保有資産は約1兆8200億円です。

横田 これまで指摘した人件費を切り詰め、人材は使い捨てというのは、柳井さん一人が儲けるためなんじゃないのかと正直思います。持ち株比率は20%を超える筆頭株主でもあるし、配当も巨額です。たとえばイトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんは、社員のために福利厚生施設、保養施設を自分のポケットマネーを出して作ったりした。儲けているから、社員にも還元する発想があるんです。でも柳井さんは見事にない。その背景を考えましたが、はっきり言ってわからないんです。ハングリー精神とは違う。幼少期から貧困とは無関係で、家庭教師もいて。60年代、早稲田大学に入学して仕送りもあって、70年代には父親の金で世界一周旅行もしている。困った経験は一度もない。でもケチ。唯一、感謝祭の時にお菓子の差し入れがあるんですが、安い駄菓子とかどら焼きでした(笑)。さらにアルバイトにも様々な守秘義務を課すんです。情報まで自分のもの。柳井さんの独裁体制を維持するためなのでしょう。それでいて、業績が悪いとバイトの勤務時間まで平気で削るんです。

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