元幹部B こうした状況を安倍首相が政治利用しているのも明らかです。その理由はやはり2002年の訪朝で安倍さんが“拉致問題のヒーロー”として一躍脚光を浴びたことだと思います。実際には何も実績はない。でも最初は安倍さんにすがるしかなかった。そして安倍首相は何も成果が上がらないのに、巧妙に家族や「救う会」に“解決するのは自分しかいない”とうえつけ、「救う会」の幹部もまた、自分たちの思想や利権のために安倍首相を崇めていく。
元幹部A その急先鋒は現在「救う会」の会長である西岡力さんだと思います。西岡さんは第一次安倍政権のときの首相のブレーンと言われていましたし、安倍首相だけでなく日本会議とのつながりも深いというのが私たちの認識です。真偽はわかりませんが、いまでも安倍首相との関係を集会などで公言していますし、極秘情報として「水面下の交渉が進んでいる」と常々語っています。まあ、毎回、毎回同じセリフを繰り返すだけですが。「家族会」の、とくに横田早紀江さんなどは大きな信頼を寄せています。
でも、わたしたちは信用できない、恐ろしい人だと思っています。あるときには脅し、あるときには笑顔で関係者を洗脳する。拉致問題に関わって以降、すごい出世もしていますし、誰も逆らえない。そして西岡さん以下の幹部たちは「解決には強い政府が必要。だから安倍政権を続けないといけない」と言う……。だから、防衛相だった稲田朋美の不祥事を問題にしたり、森友・加計問題を話題にするのは非国民扱い。異論は封殺される。
同時に西岡さんは、熱心に従軍慰安婦の強制連行を否定する活動もしている。北朝鮮の拉致は、じつは韓国人がもっとも多く、日本も連携するのが筋なのに、真逆な行動をとっている。しかも、安倍首相がおこなった日韓合意に対し、西岡さんは本来なら批判する立場なのにそれもしなかった。
元幹部A 「家族会」もすっかり洗脳されてしまっている。「家族会」20周年の挨拶で代表の飯塚繁雄さんは「わが総理大臣を中心として、ミサイルが飛んでこようが、核実験をやろうが、どんな状況下にあろうとも、この問題を最優先にして前に出して、今年中という期限を切った形で皆さんと共に、心と意志を集中しながら闘っていきたいと思います」と安倍首相を絶賛する挨拶をしていました。しかし繰り返しますが、安倍首相の功績はゼロなんです。
でも「家族会」や「救う会」は「安倍さんがやってくれる。だから我々は何もしなくていい。安倍さんの応援だけしていればいい」と思っている。そうした気持ちを安倍首相は政治利用する。「家族会」も親世代から、兄弟、子どもの世代に引き継がれ、その傾向はますます強くなっています。
結局、相互の利害が一致して、拉致問題を利用し合っている。被害者のご両親は別として、「救う会」、政府とも、問題が解決しないほうが都合がいいと思っているとしか思えない。それが実態です。