一方、今日発売の「週刊新潮」が興味深いスクープを出した。それは、山口氏が「週刊文春」15年4月2日号に寄稿した「韓国軍にベトナム人慰安婦がいた」とする“スクープ記事”の「捏造疑惑」だ。記事では、山口氏の記事が根拠とするアメリカの公文書のなかに実際には「慰安婦」や「慰安所」の言葉がないことを突き止め、また証言者として登場する元米軍人にあらためてインタビューを行うなどして、山口氏の記事との矛盾点を細かく検証している。
だが、なかでもとくに注目すべきは、山口氏が「週刊文春」に寄せた“韓国軍ベトナム人慰安所スクープ”に、安倍政権の策略がからんでいたのでないかという点だ。
詳しくは発売中の「週刊新潮」を読んでもらいたいが、驚くことに、少なくとも山口氏は記事の載った「週刊文春」発売の前後、山田重夫駐米公使(当時)ら政府の外交官に、記事のゲラや公文書のコピーをメールで送るなどのやりとりをしていたというのだ。「週刊新潮」が報じる山口氏と日本政府要人とのやりとりによれば、菅官房長官の会見や米国務省の広報官会見においてこの記事についての質問が出る手はずを整えていたことなどがわかる。
「週刊新潮」は〈安倍外交を援護したかったが故の共同作業〉と書いているが、つまり山口氏は、韓国の慰安婦問題に対抗したい安倍官邸の意向を汲んで記事をつくり、さらに記事を材料とした外交戦略についても政府とすり合わせていたとみられるのである。
とすれば、こうした山口氏と安倍官邸とのベッタリの関係は、やはり詩織さんの事件にも少なからず影響していると考えるのが自然だろう。周知の通り、「週刊新潮」による詩織さんレイプ事件の取材の過程で、山口氏がメールで事件の対応を「北村さま」なる人物に相談していたことが明らかになっている。本人たちは否定しているが、この「北村さま」は、“官邸のアイヒマン”の異名をもつ北村滋内閣情報官のことと言われている。
「今売ってる週刊文春に僕の寄稿が掲載されているから読んでおいてね」
詩織さんが東京で山口氏と会うことになる数日前、山口氏はメールでそう書いてきたという。奇しくも、山口氏が意識を失った彼女をレイプしたのは、今回「週刊新潮」が追及している韓国軍ベトナム人慰安所の記事が発表されたのと同じタイミングだった。