SKY-HIこと日高は、AAAメンバーとして全国ドームツアーを行い、SKY-HI名義のソロでも日本武道館公演を成功させるなど、メジャーシーンで活躍するミュージシャンだ。この立ち位置でこうした政治的メッセージを発信するミュージシャンはめずらしい。所属するエイベックスとは、その方向性を支持してくれるスタッフもいる一方で、政治的なテーマの曲をめぐって衝突したこともあったようだ。
実際、「ミュージック・マガジン」17年8月号のインタビューでは、これまでにまわりのスタッフやレーベルから政治的な曲はやめたほうがいいとの忠告や衝突があったと明かしている(特定秘密保護法をモチーフにしたラインのある「F-3」など、SKY-HIが政治的な楽曲を出したのはこれが始めてではない)。「ミュージック・マガジン」誌のライターから「これまでに周りのスタッフやレーベルから政治的な曲はやめた方がいいと忠告されたり、そういうことで衝突したこともあるんじゃないですか」と質問された彼はこのように答えている。
「ありましたね。1個学んだのは、人間、怒られた時にちゃんと謝ったら絶対許してもらえるはずだっていうことです(笑)」
ただ、これまでの活動や上記の発言を見ればわかる通り、SKY-HIは今後も怖じ気づくことなく社会的なトピックを扱った曲を出していくつもりのようだ。実際、彼がいま準備している新曲「Marble」(来月リリース予定)は、人種差別問題についてにも触れた楽曲とされている。その背景には、全世界的に起きている差別に関する問題はもちろん、それに加えて、自身の経験も反映されているという。
彼はラッパーとして活動するにあたり、常に「所詮はアイドル」という色眼鏡で見られ続けてきた。その経験から偏見により正当な評価を受ける以前の段階で弾かれてしまう人たちの気持ちが理解できると、前掲「MUSICA」でこのように語っている。
「偏見を浴びてる人の辛さもわかるから、経歴や噂とかで人を判断したり不特定多数の人を否定したりしないように生きていたいんだけど、宗教や人種、思想で壁を作ったりっていう悲劇的な事件も最近は多くて。そう考えると、たぶん我々が学ぶべきことって、いろんな人がいて、いろんな価値観があるんだよっていうことでしかなくて。それを知る機会をちゃんと作る必要はあるって思うんですよね」
彼は自身の活動について、それがなにかと議論を呼んでしまいがちであるということは客観的に認識しているという。ただ、それでも活動の方針を変えるつもりはないとしている。それは自分のためであるとともに、この社会全体のためでもあるという思いがあるからだろう。
「自分がやっていることが過激であるというふうに捉えられるという認識は凄くあるんだけど、それを当たり前のこととしてやらないと、それが当たり前のことになる時代は来ないから」(前掲「MUSICA」より)
今後のSKY-HIの活動に注目したい。
(新田 樹)
最終更新:2017.09.27 01:10