しかも、すでに方々から指摘がなされているが、消費税の財源変更については民進党代表選で前原誠司代表が訴えていたこと。姑息にも安倍首相は争点を消そうとしているのである。
だいたい、安倍政権はこれまで安保法制や共謀罪という国の根幹にかかわる重大法案を、選挙ではろくに説明もせず、騙し討ちのように強行採決で次々と成立させてきた。たしかに税金の使途変更は大きな問題だが、本気でやりたければ、国会を開いていつものように無理やりにでも議論すればいいではないか。それをこの聞こえのいい問題に限って「信を問う」などというのは、欺瞞以外の何ものでもない。
さらに、安倍首相は人づくり革命の一環として「所得の低い家庭の高等教育無償化」「3〜5歳児の幼児教育無償化および0〜2歳児も低所得世帯に限って無償化」「待機児童のために2020年度までに32万人の受け皿整備」などを打ち出したが、これも国民をバカにしているとしか思えない。
そもそも、安倍首相は総理に返り咲いた2012年の衆院選でも、幼児教育の無償化を公約に掲げていた。また、13年には「2017年度までに待機児童ゼロを目指す」と断言。つまり、幼児教育の無償化も待機児童ゼロも“公約破り”案件なのだ。その上、今年5月に「熟読しろ」と国会で言い放った読売新聞のインタビューにおいては、教育無償化を憲法改正のテーマとしてもち出していた。教育無償化に憲法改正をおこなう必要などまったくないが、それを改憲のダシに使おうとさえしていたのである。
そうやって教育無償化を改憲議論や選挙になるともち出すわりに、そうした場面以外では、教育無償化に消極的な態度、いや消極的どころか積極的に潰してきたのが当の安倍首相だ。
たとえば、民主党政権時、政府は高校授業料の無償化を実施したが、この高校無償化に猛反発していたのは、いわずもがな自民党である。事実、いまでも自民党のHPには「高校授業料無償化の問題点!」「理念なき選挙目当てのバラマキ政策には反対です」と記載されている。