東京五輪の買収は決定的だったとなれば、東京五輪開催の是非にもかかわる大問題だ。ところが、いまのところ日本の大手マスコミはこの問題についてまったく報じようとしない。唯一、東京新聞が掘り下げて記事にしたが、あとは共同通信と朝日新聞がガーディアンの記事を引くかたちで短く報じたくらいだ。
今回に限らず、これまでも日本のマスコミは五輪裏金問題をまったく追求してこなかった。その理由のひとつは、大手広告代理店・電通の存在である。
電通といえば、招致活動から東京五輪に食い込み、招致決定後は東京五輪のマーケティング専任代理店として、あらゆるマーケティングや広告利権を一手に掌握すべく動いていたことは周知のとおりだが、この裏金問題でも中心的役割を果たしたのが電通だったのだ。
実際、竹田会長自身、「電通さんにその実績を確認しましたところ、(BT社は)十分に業務ができる、実績があるということを伺い、事務局で判断したという報告を受けています」と国会で電通の関与を証言。さらに、BT社の代表はラミン・ディアク氏が会長を務めていたIAAFの商標権の配分などを行う電通の関連会社「アスレチック・マネージメント&サービシズ」のコンサルタントだったことも判明している。
しかし、国内メディアはこの裏金疑惑について、そして電通の関与について、まったくといっていいほど報じていない。
その理由は、言うまでもなく電通がマスコミ最大のタブーだからである。広告収入に大きく依存するテレビ局はもちろん、新聞、雑誌などあらゆるメディアにとってアンタッチャブルな存在であることは説明するまでもないだろう。実際、昨年5月の時点で、ガーディアンが電通の名前を出した上でその関与を指摘しているが、テレビや新聞は電通の名前さえ出すことに尻込み、またワイドショーもこの問題をほぼスルーした。せいぜい「週刊文春」(文藝春秋)が電通側のキーマンを名指しし、疑惑を追及する動きを見せたくらいだ。