〈しかし皮肉なことに、五月二十二日に読売が前文科次官・前川喜平の出会い系バー通い疑惑を報道。これに反発した前川が加計学園問題に関する官邸関与の証言を始めたことで、今度は加計問題が火を噴いた。
安倍の目算は狂った。こうして憲法改正の機運はあえなく萎んだのだった〉
国会における安倍首相の「読売新聞を熟読しろ」発言は無視。前川氏の醜聞を読売にリークして証言潰しを画策したことも無視。こうした安倍首相の「驕り」には目を向けず、「改憲の気運が萎んだ」って……。岩田記者は安倍首相と同じで、都合の悪い現実は何も見えていないらしい。
どうだろうか。威勢がいいのはタイトルだけ。そのじつ、何ひとつ安倍首相の驕りを諫める内容ではない。いつもどおりの、安倍首相をもちあげつづける岩田節が貫かれているのである。
無論、この寄稿文が岩田記者と安倍首相の訣別を意味しているわけではまったくない。
現に、内閣支持率が低下して以降の安倍首相は「反省しているフリ」に余念がない。「驕り」というフレーズにしても、8月5日に安倍応援団の一員である辛坊治郎が司会を務める『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)に出演し、「自分の気持ちのなかに驕りが生じたのかもしれない」と語っていた。そして、「驕っていたかも」と言いつつ、加計問題では疑惑の真相究明に乗り出す姿勢を微塵もみせていない。
結局、安倍首相および官邸としては、とりあえず殊勝な演技をすることが「作戦」で、岩田記者もそうした作戦の一環として「驕り」をただすポーズをした、しかし中身は礼賛という記事を書いたのだろう。
事実、岩田記者の寄稿文は、〈安倍がこれまで築き上げてきた地球儀俯瞰外交が、国内問題に足元をすくわれることで機能不全に陥っている現状に、安倍自身は気付いているのだろうか〉などと安倍応援団の妄想でしかない「外交実績」を振りかざし、最後は〈安倍は、政権を奪還したころの初心を取り戻すことができるのか。党内政治ではなく、民意を優先する政治の原点に立ち返ることができるのか〉と締めている。安倍首相の「民意を優先する政治」など見たことも聞いたこともないのだが。
しかし、現実は残念ながら、安倍首相および官邸が思い描いているかたちになりつつあると言えるだろう。殊勝な「反省」ポーズと、北朝鮮に対する「強いリーダー」ポーズ。このふたつによって、内閣支持率が回復しつつあるからだ。だが、それらは実態のないまやかしであり、現実をさらに悪化させるものである。安倍首相、そして岩田記者の妄言は、落とし穴でしかない。
(編集部)
最終更新:2017.09.12 08:58