まあ、それはともかくとしても、だ。ようするに青山センセイは、少なくとも、ご自身のサイン会の告知にぬかりないほどには“冷静”ということらしい。ちなみに、青山センセイは4日の『虎ノ門ニュース』収録後も、スタジオ前のファンが持参した『危機にこそぼくらは蘇る』にサインしてあげたらしいが、いやはや、やっぱり本気で「今日にも攻撃がある」なんて思っていないんだろう。
まあ、青山センセイは昔から“産まれてすぐタライのなかで立った”とか、“中国に行ったら二日目の夜から中国語を話せるようになった”とか、“外国の工作機関の標的にされてウイルスで原稿が2回破壊された”とか、その種のにわかに信じがたい話を連発しているので、「例のクセがまた出た」ということなのかもしれない。だが問題なのは、「安全保障の専門家」を自称するこの人が、もしかしたら防衛や軍事に関する基礎的な知識すらもっていないのではないか、という疑念が拭えないことである。
青山センセイが出演した9月2日放送の『みのもんたのよるバズ!』(AbemaTV)でのこと。この日は8月29日の北朝鮮のミサイル発射やJアラートが話題になったのだが、スタジオトークで、MCのみのもんたがこんな疑問を呈した。
「これ、(日本は)待ってるだけじゃなくてさ、(北朝鮮が)撃ちそうなところをドッカンと、そういうことはできないの?」
すると、青山センセイは大きく口を開けて笑い、みのを絶賛しながら、嬉しそうにこう語ったのである。
「みのさんの口からそれが出るようになったってこと自体が、日本は前進してますよ。そういうのを『敵基地攻撃能力』っていうんですけど」
しかし、同じく出演者の「コリアレポート」編集長・辺真一氏もすぐに「みのさんが言っているのは先制攻撃」とつっこんでいたように、みのの発言に青山センセイが大喝采したケースは、明らかに専守防衛の範囲を超えた違憲の「先制攻撃」にあたる。
そもそも、いま安倍政権も検討している敵基地攻撃能力の議論は、朝鮮戦争から6年後の1956年に、当時の鳩山一郎首相が「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべき」との政府見解を出したことに始まるが、ミサイルを撃つ前の基地や拠点を「危なそうだから」という理由で破壊すれば、これは「先制攻撃」であり明確な違憲かつ国際法違反だ。事実、2015年7月28日の参院特別委で、当時の岸田文雄外相も「他国から武力攻撃を受けていない段階で自ら武力の行使を行えば、これは国際法上は先制攻撃に当たる」と答弁している。