『クローズアップ現代+』番組HPより
学校の教科書採択を巡り波紋が広がっている。「学び舎」という出版社がつくる歴史教科書を採択した全国の私立学校に対し、「反日極左の教科書」「採択を即刻中止にすることを望みます」などという“抗議ハガキ”が大量に送りつけられるという、教育現場に対する圧力問題の件だ。学び舎教科書は、国の検定を合格した教科書で唯一、河野洋平談話を紹介するかたちで慰安婦問題について触れていた。
本サイトでも先日、学び舎教科書を採択した私立灘中学校・灘高等学校(神戸市)の和田孫博校長が、自民党の県議や国会議員から「なぜあの教科書を採用したのか」と詰問され、その後の大量の“抗議ハガキ”について文書で告白していたことを紹介したが、9月6日放送のNHK『クローズアップ現代+』でもこの問題が取り上げられた。
NHKの独自調査では、学び舎教科書を採択したことで抗議を受けた私立中学校は、全国で29校に上ったという。そのなかで、番組の取材に応じた南山高等・中学校女子部(名古屋市)には、半年で100通以上の“抗議ハガキ”が届けられた。同校の教諭はNHKにこう語っている。
「いろんなところからいろんなかたちで圧力がかかってくる。いままで当たり前にやっていた授業ができなくなる。それはちょっと怖いなと思いますね」
「子ども目線でどういう教科書が本当にいいのか常に考えているんですね。それで選んだ教科書が『反日極左の教科書だ』とか、一方的に断罪するのはとても納得はできないです」
“抗議ハガキ”は2種類あった。ひとつは、日中戦争の様子を写したと見られるポストカードで、匿名の「OB」を名乗って送られてきたもの。本サイトでも指摘したように、この抗議ハガキ運動を組織したのは、慰安婦問題や南京虐殺を否定する論陣を張り、日本会議の集会などで講師も務める自称「歴史研究家兼ジャーナリスト」の水間政憲氏だ。水間氏はブログで、学び舎教科書を採択した学校名と校長名、住所、文例などを列挙し、「OB」を騙って“抗議ハガキ”の送付を呼びかけた。同時に、この抗議のポストカードをホームページなどで販売していたのである。
6日の『クロ現』では、このネトウヨを組織化して圧力ハガキ攻撃を繰り出した水間氏を直撃。水間氏は「呼びかけましたけどね、広く」と首謀したことこそ認めたが、圧力や不安を与える意図は?と尋ねられると、なんとこう嘯いたのである。
「いや、啓蒙ですよ。次の採択に活かしてくださいって、それが一番の前提ですよ。次の採択に間違いないようにしていただければいいんじゃないですかって」