まず、番組では「人事の舞台裏や総裁選への本音に迫る」と題して、岸田政調会長の出演が始まるのだが、普段、ワイドショーに出演しないこともあってか、笑い顔もどこか表情が固い岸田。普通のジャーナリズムの感覚なら(まあ『ひるおび!』に期待しても無駄だが)ここでいきなり「なんでこの番組に出ようと思ったんですか」ぐらいのジャブを放つところだが、MCの恵俊彰は逆に「なごやかに進めていきたいと思います(笑)」などと、緊張をほぐしにかかる。
さらに、冒頭の話題が「こんな一面も…」なるスクリーンパネルを使って、岸田氏が広島カープのファンで始球式にも出たという話。恵は「今日のトップニュースとしては岸田さん! マジックが点灯しましたよ、最速ですよ最速!」「どこがいいんですか今年の広島は?」などと、とうてい与党の有力政治家に質問する内容ではないが、ようするに広島を選挙区にする岸田に“好感度アップ”の水を向けるという『ひるおび!』流のゴマスリなのだろう。
しかも、この広島カープの話が終わったら、次の話題は、岸田が地元で出している広報誌をフル活用し、そのプロフィールなどを紹介し始める始末で、いつまでたっても出演者から肝心の質問が出てこないのだ。そう、もちろん、いま国民が注目している加計問題、森友問題、そして自衛隊日報問題のことだ。
とりわけ、岸田は短期間とはいえ、辞任した稲田朋美の後を引き継いで、防衛相を兼務した人間。当然、防衛省内部の混乱を知っているわけで、普通なら隠蔽疑惑についてはもちろん、シビリアンコントロールの問題など、国民に代わって番組が徹底的に岸田に質問するべきところ。たとえ、岸田側からのNGでそれが難しくとも「岸田さんから見て、稲田さんってどんな人なんですか?」ぐらい聞いてチクリと刺すぐらいはするだろう。にもかかわらず、『ひるおび!』では日報のニの字すら、最後の最後までまったく出てこなかったのである。
いったい、何のために岸田をスタジオに呼んだのか。頭がクラクラしてくるが、MCの恵を筆頭に、出演者一同、岸田に国民の質問をぶつけるどころか、見え見えのおべっかに終始。たとえば、恵に岸田の印象をふられた水曜レギュラーの伊藤聡子は「ジェントルマン。とても素敵だと思う」、デーモン小暮は「とても振る舞いがしっかりしている。失言もなさらない」などと岸田を褒めたたえる。いったいどちらがゲストか、わからないほどの“借りてきた猫”だ。
さらには、岸田のほうから「失言がないのはいいことだと思いますが、まあ、言葉を変えるとね面白くないと思いますが」と自虐アピールをしてきたときも、ここで恵がすぐさま「えーーーーーっ」とわざとらしく驚いてみせ、あげく「今日は面白いところ引き出していきましょうよ!」などとほざく始末。お前はキャバクラで銀行の融資担当を接待する中小企業のオヤジか!とツッコミたくなるではないか。
そんな感じで、終始、見ているこっちが恥ずかしくなるほどの“接待モード”で進行していった『ひるおび!』。次期首相候補に対して、本来すべきはずの政策についても鋭い質問を一切することなく、どうでもいい“酒豪エピソード”も何度も繰り返すばかりで、まったくあくびが出るほどだった。