なぜ安倍政権は核兵器禁止条約に一貫して反対しているのか。たしかに、広島・長崎への原爆投下以降、核兵器を違法とする国連条約は初めてで、その使用だけでなく製造や保有、実験、移譲、そして核による威嚇なども全面禁止する内容。これに対し、アメリカやロシア、フランスなどの核保有国は「核抑止力を必要とする世界の安全保障の現実を踏まえていない」などとして反発。アメリカの核の傘に入っている日本もこれに追随した格好──と、新聞やテレビなどは報じている。
だが、そのアメリカ盲従の姿勢はあくまで表向きのものにすぎない。というのも、実は、安倍首相の頭のなかには“核廃絶に向けた努力”という考えなど一切ない。むしろ本音は“核の保有や核兵器の使用は認められるべき”というものなのである。
さすがに“被爆国”の首相としてそれはないだろう、と思うかもしれないが、決めつけで言っているわけではない。事実、安倍首相はこれまで、核軍縮に反対する行動を散々とり続けてきたからだ。
そもそも安倍は、官房副長官時代の2002年、早稲田大学で開かれた田原総一朗氏との対話のなかで「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」と語っている(「サンデー毎日」02年6月2日号/毎日新聞出版)。また、2006年には「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記すなど、安倍首相はもとより積極的な核武装論者なのだ。
第二次安倍政権発足後も、その姿勢は変わっていない。2015年8月6日の広島の平和記念式典での演説では「非核三原則の堅持」に言及しなかったが、これは予定稿には入っていたのにもかかわらず安倍首相自らの判断で削ったことがわかっている。
しかも安倍首相は、米オバマ前大統領が打ち出そうとしていた「核の先制不使用宣言」にも真っ向から反対、ましてや潰しまでにかかっていたのだ。