しかし、このように反原発のメッセージを訴え続けていれば、当然、原発スポンサー企業との間で軋轢が起こる。実際、こんな体験までしているようだ。
「リスキーだし、マイナス面も増えますよ。実際にコマーシャルの話が来る時に『原発発言、しますか?』みたいに訊くところもあるわけで。『しますよ』と言うと、その話はもうそこでなかったりするしね」(「bridge」13年3月号)
ただ、それでも彼は諸々の圧力で発言をつぶしてこようとする勢力に屈することは一切なかった。
「金や権力で人を黙らせようとするものに対しては、自分は絶対に「はい」とは言えません」(「週刊朝日」14年9月19日号/朝日新聞出版)
また、吉川のように社会的な発言をしていると必ず襲ってくるのが、「何の知識もない芸能人は黙っていろ」といった攻撃だ。そういった「炎上」に対しても、彼はこう言い切っている。
「ミュージシャンであれ芸能人であれ、政治的な発言はしないほうがいいという風潮には疑問を感じています。ひとりのこの国の民として、己が生きのびるために必要な権利を主張しないのは、おかしい」(前出「週刊朝日」)
「一時期、文化人とかエンターテイナーが政治や経済について語ることはかっこ悪いみたいな風潮が日本にもあったと思うんだけれども、今はそんなこと言ってる人がかっこ悪いと思ってますよ。どんどん言うべきじゃないのっていう」(前出「bridge」13年3月号)
前掲『NNNドキュメント 4400人が暮らした町〜吉川晃司の原点・ヒロシマ平和公園〜』の冒頭で彼は、「年を重ねるごとに故郷への思いも変わってくるっていうか深くなってくる」と広島への思いを語っていた。
吉川にはこれからも原爆や原発に関してのメッセージを発信し続けていってほしい。それは、広島や日本のみならず、この世界にとって重要な主張なのだから。
(新田 樹)
最終更新:2017.12.06 06:37