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椎名林檎が「国民全員が組織委員会、全企業が五輪に取り組め」…日本を覆う“五輪のために滅私奉公”の空気

 また、「オリンピックのため」という大義名分のもと、過重労働が強いられ、死者まで出たことも明らかになっている。

 先月、新国立競技場の工事現場で管理業務に従事していた男性が自殺したのは過重労働が原因だとして遺族が労災申請をしたニュースは大きく報道された。工期の遅れを取り戻すために長時間の労働を余儀なくされており、200時間近い時間外労働を強いられていたことが明らかになっている。

 本当に痛ましい事件だが、このままではこの悲劇が「氷山の一角」となってしまう可能性がある。

 2019年度から始まる残業時間の上限規制により、原則として全業種で残業を年間720時間、繁忙月は特例で100時間未満までとなる働き方改革がなされるが、しかし、運輸と建設に関しては、この上限規制に猶予期間が設けられる予定なのだ。その理由もオリンピックだ。

 日本経済新聞の報道によれば、労働時間の単純な短縮は五輪関連などの工期に影響しかねないため、日本建設業連合会が国土交通省に時間外労働の上限規制の建設業への適用に猶予期間を設け、東京五輪以降に段階的に導入するよう要請したという。

 本末転倒だろう。たかだか数週間の体育祭のために、なぜ国民の健康や命が削られなくてはならないのだろうか。まともな労働時間で間に合わないのなら、人手や人件費を増やしたり、工事計画のほうを修正するのが本来だろう。繰り返すが、そもそも工事の遅れを生み出したのも、組織委員会の失態だ。そのツケをなぜ労働者が死んでまで払わされなくてはならないのか。だいたい、誰かが死ぬほど働かないと間に合わないような競技場なら、間に合わなくていい。

 たとえば、サッカーのブラジルW杯やリオ五輪でも、工事の遅れがたびたび指摘され、実際開会式に間に合わなかった施設もあったが、だからといってそれが大会全体を揺るがすような何か大きな問題を引き起こしただろうか。

 それが日本では「オリンピックのため」となると、残業時間の規制という労働者を守るための当然の法律の施行まで猶予してしまう。あり得ない話だろう。

「オリンピックのため」というスローガンのもと、無理が通ってしまったのは、共謀罪も同じだ。「五輪のためのテロ対策」という大義名分のもと、安倍政権は希代の悪法である共謀罪まで成立させてしまった。安倍首相自身、衆院本会議で「国内法を整備し、条約を締結できなければ東京五輪・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と強弁。共謀罪を成立させなければ国際的組織犯罪防止(TOC)条約に加盟できない、TOC条約を締結できなければ五輪は開けない、という論法じたい、日弁連はもとよりTOC条約の世界的権威からもインチキを指摘されている大ウソなのだが、仮に本当だとしても、オリンピックが本当に国民の人権を制限しなければならなければ開催できないような代物なら、さっさと開催を返上するべきだ。

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