室井 あの条項を普通に読んだら「災害が起こったら、お前らの貯金没収な! ひゃっほう!」って言われている気がしました。大地震や戦争など有事があったら、いろいろな権利や人権まで制限されたり、貯金だけでなく家とかも取られちゃうんですよね?
小林 僕はそこまで考えていなかったけど、言われてみればそうですね。そういう発想が大事ですね。
室井 あと気になるのは、家族条項です。“家族は助け合え”なんて国に言われたくないし、それぞれ事情があるもの。育児放棄やDV、性的虐待をする親だっているでしょ。それなのに親が歳とったからって子どもが養えって、ありえない。介護も家族にだけ押し付けて、自己責任だと言ってるってことですよね。国が国民に金を使いたくないんだな。
小林 福祉国家の否定ですね。それと、やっぱりさっき言ったように、彼らの目的は「大日本帝國憲法の復活」だから、戦前のような家族に戻したいんでしょう。
室井 狂ってますよ。でも、共謀罪のやり方を見ていると、このままいったら、本当に改憲ってことになってしまう。そんなおかしな安倍政権を倒すには、先生、どうしたらいいんでしょう?
小林 現在の政権下で起こっている根本的な問題は、今の選挙制度のせいで、たかだか4割の得票率で7割の議席を取っているということです。でも、これは、逆に、こちらも4割の得票率で、政権を倒す可能性があるということ。絶対に超えられない壁ではない。ただ、そのためには、野党がまとまらなければならない。そして、野党がまとまるためにはまず、民進党を潰さなきゃいけない。潰れたらどこかに寄っていくしかなくなりますから、政策での再編も可能です。
室井 私、選挙の度に毎回、民進党とかイヤだけど、鼻つまんで投票してますよ。でもだんだん、もう無理じゃね? と思ってきて。最近は分裂させた方がいいんじゃないかと。まさか先生も民進党を潰したほうがいいと思っているとは……。
小林 前回の参議院選挙で、民進党を潰さないと野党をまとめることはできないと痛感しましたね。
室井 そういえば、先生、前の参院選で出馬したんですよね。出馬の前には民進党や共産党に野党統一候補の擁立を働きかけていたのに、結局、民進党に野党の比例代表の統一名簿を作ることを拒否されて。
小林 そう。こっちは野党をまとめようとしているのに、それぞれの党が私に「自分のところの候補者になれ」と言ってきた。それは違うでしょう。まとめようとしたのだから、まとまってくれよ、と。でも無理でした。しかも選挙中には全国で野党に罵倒されましたが、選挙が終わると、今度は全野党から「ごめんなさい。よろしく」と言われて。態度がコロッと変わった。
室井 そんなの、絶対に許しちゃダメですよ。
小林 本当に身の毛もよだつ汚わしい世界でした。ですから、選挙には二度と関わりません。ただ、憲法学者ですから、一番知識を持っているし論争もしてきた。憲法問題について聞かれれば語ります。そして室井さんの言うことは正しいんです。どこかから、風穴を開けなきゃいけない。野党もこのままいくとジリ貧だという自覚もあって。地殻変動は起きているんです。
室井 本当ですか? 野党共闘は口だけなんじゃないかって思っちゃいます。
小林 だから、内心で一番傲慢な民進党を潰すんです。選挙にチャレンジして落選した僕が言うのもなんですが、その疑いは持っていてください。それで、彼らを罵倒しながら、安倍政権を倒す方法を探る。