渡辺謙『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)
7日、国連本部で核兵器禁止条約が採択された。広島・長崎への原爆投下以降、核兵器を違法とする国連条約は初めてで、その使用だけでなく製造や保有、実験、移譲、そして核による威嚇なども全面禁止する内容。加盟193カ国中、124カ国が投票に参加し、オーストラリアや南アフリカなど122カ国が賛成という圧倒的多数で採択だった。“核なき世界”への第一歩となることが期待されている。
ところが“唯一の被爆国”である日本は、そもそも条約の交渉にすら参加していなかった。さらに、7日の採択の後には日本の別所浩郎国連大使が記者団に対し、条約に「署名しない」と明言するなど、国連の核廃絶の流れに完全に逆行した態度を頑なにとり続けている。
こうした日本政府の姿勢には方々から非難の声があがった。たとえば、昨年10月、核兵器禁止条約の交渉を2017年にスタートをする決議がなされたのに対し、日本が反対したときには、俳優の渡辺謙までもがツイッターでこう批判していた。
〈核兵器禁止条約に日本が「反対」という信じられないニュースが流れました。いったいどうやってこの地球から無用な兵器を無くしていくつもりなのか? 核を持つ国に追従するだけで意見は無いのか。原爆だけでなく原発でも核の恐ろしさを体験したこの国はどこへ行こうとしているのか、何を発信したいのか〉
渡辺の批判は簡潔ながら極めて当然のものだ。では、なぜ安倍政権は核兵器禁止条約に一貫して反対しているのか。前述の通り、条約では核による威嚇なども禁じるなど、かなり踏み込んだ内容になっている。これに対し、アメリカやロシア、フランスなどの核保有国は「核抑止力を必要とする世界の安全保障の現実を踏まえていない」などとして反発。アメリカの核の傘に入っている日本もこれに追随した格好──と、新聞やテレビなどは報じている。
だが、そのアメリカ盲従の姿勢はあくまで表向きのものにすぎない。というのも、実は、安倍首相の頭のなかには“核廃絶に向けた努力”という考えなど一切ない。むしろ本音は“核の保有や核兵器の使用は認められるべき”というものなのである。
さすがに“被爆国”の首相としてそれはないだろう、と思うかもしれないが、決めつけで言っているわけではない。事実、安倍首相はこれまで、核軍縮に反対する行動を散々とり続けてきたからだ。