このラインは、言論の自由を著しく萎縮させ、「自主規制」を横行させる恐れのある共謀罪への批判であると同時に、ミュージシャンや俳優などが政治的な発言を行うと「芸能人風情が偉そうに語るな」と炎上を焚き付けられる風潮に対する異議でもあるだろう。
昨年6月、「FUJI ROCK FESTIVAL’16」にSEALDs(当時)の奥田愛基氏の出演がアナウンスされたことをきっかけとして、「音楽に政治を持ち込むな」という論争が起きたことは記憶に新しいが、彼はこういった日本社会の風潮に対し、ツイッターでこのように主張していた。
〈社会的な話をツイートしたり伴ってハッキリと意思を持った発言をすると、面白いくらい…時には軽く数万単位でフォロワーが減るんだけど、それは兼ねてから言われている「芸能人(って言葉も最早嫌いなんだけど)は政治、宗教、野球チームの話はしてはいけない」って話と繋がるのでしょう。〉
〈でもそうやって出来上がった日本のエンターテイメントがどんどん嘘や無味無臭になっていくのは面白くないし、第一もう古いとしか思えないから、自分は発言します。「海外のアーティストの様に…!」って訳ではないんだけど、クリエイティブの壁の前に存在する、意識の壁が気になってしまう〉
〈人前に立つ立場の人間が、まるで性器でも隠すかの様に自分の意思や主張を言わない、嘘でも良しとするってのは、違和感しか感じないし、少し話は逸れるけれど間違いや過ちを集団ネットリンチする姿勢も、アンチグローバルに感じるし、世界の成長から取り残される日本と単純にダブるのです。〉
〈本来、人前に立つ機会が多いミュージシャンやタレントこそ、明確に意思や主張を発言するのも、SNSがある以上そこに反映されるのも当然のことに思います。皆で予定調和の無味無臭な平均点を作る事と「エンターテイメント」は真逆でしょう本来。〉
当然のことながら、海外において「音楽に政治をもちこむな」などという馬鹿げた主張が横行することはない。今回、SKY-HIが行ったように、時事問題に対しラッパーが素早く反応し、ネットを通して楽曲を公開することは珍しいことでもない。昨年の大統領選挙中、エミネムがドナルド・トランプ批判を含んだ新曲「Campaign Speech」を突如発表し話題となったことを覚えている人も多いだろう。
ちなみに、SKY-HIは、5月31日にリリースしたばかりのシングル「Silly Game」でも、同調圧力や排他主義について言及したり、トランプ政権の強権的な政策について批判していた。