ようするに、「週刊文春」は山口敬之氏というジャーナリストを生み出したメディアだったのだ。しかも、その背景には現編集長の新谷学氏との密接な関係があった。
「山口氏を引っ張ってきたのは、新谷編集長。TBS退社のきっかけになった韓国軍の慰安婦記事も新谷編集長の企画でした。以来、非常に密接な関係を築いたようです」(週刊誌関係者)
実際、新谷編集長は山口氏をことあるごとに絶賛、また“安倍首相御用記者批判”から擁護さえしている。たとえば今年4月に文庫化された『総理』では、解説をほかならぬ新谷編集長が書いているのだが、ここにはこんな記述があった。
〈ジャーナリストの中には山口さんのことを、「御用記者だ」と批判する人物もいる。それは私に言わせればナンセンスだ。政治記者にとって、総理大臣ほど強力なネタ元はいない。〉
〈問題なのは、政治家に食い込み、仲良くなることが目的化してしまった記者だ。癒着した結果、書くべき事実をつかんでも、政治家に気兼ねして書けなくなってしまう。〉
〈ただし、この『総理』において、山口さんのそうした配慮はまるで感じられない。〉
山口氏のような露骨な癒着記者に何を言っているのか、という感じだが、それくらい新谷編集長と山口氏の関係は親しいということだろう。
さらに、両者の関係には、安倍官邸が介在しているのではないかという見方もある。周知のように、「文春」の新谷編集長はもともと、第一次安倍政権が誕生する2006年の自民党総裁選の準備運動として出版された安倍首相の著書『美しい国へ』(文春新書)を仕掛けた担当編集者。以来、新谷編集長は安倍首相や周辺と親しい関係を築いてきたといわれる。「文春」編集長になったあとも、政権スキャンダルを仕掛ける一方で、官邸関係者に深く食い込み、“新谷マター”といわれる官邸リークにのった記事も数多く掲載してきた。
山口氏もこの官邸人脈に紹介された可能性がある。実際、山口氏がTBSワシントン支局長時代に「文春」に発表した前述の韓国軍の慰安婦問題レポートについて、新谷編集長は『総理』の解説で「あるディープなネタ元から」紹介されたと書いているが、この“ディープなネタ元”というのは官邸幹部のことではないのかといわれている。
ようするに、新谷編集長と山口氏は官邸人脈を巡って、ある種の共犯関係にあるため、批判したくてもできないのではないのか。
もちろん、新谷編集長の場合は、山口氏とまったくちがい、官邸に深く食い込みながらも、そこにからめとられずに、一方で安倍政権のスキャンダルを徹底的に暴いてきた。しかも、山口氏のレイプ問題が浮上して以降、加計学園問題で前川喜平・前文科次官の実名証言を最初に掲載するなど、潔白証明をするかのように、政権に批判的スタンスを強めている。
その点については高く評価したいが、しかし、その一方で山口問題への沈黙はいくらなんでも不自然すぎるだろう。後顧の憂いなく安倍政権を徹底追及するためにも、「文春」は山口問題を総括しておくべきではないか。
(編集部)
最終更新:2017.12.05 01:29