このような光景を実際に目の当たりにしているからこそ、野際は戦争を知らない世代が社会を動かすようになり、戦争に向かいかねない状況に危機感を募らせたのだろう。
2015年に放送された前掲番組『ザ・インタビュー』で野際は、「いまは昭和17年(1942年)ぐらいの感じですね。どんどんどんどん戦争に向かっていっている。それはとても気持ちが悪いですね」、「いまの政治家は戦争を知らない人たち」と危惧を語る瀬戸内寂聴の言葉に大きく頷き、「(戦争中は)私はまだ小学生だったんですけど、時々ね、ふっとあの頃のことを思い出すことがあるんですよね」と語っていた。
戦争を体験した世代がどんどん鬼籍に入っていく。ここ数年でも、水木しげる、野坂昭如、永六輔、大橋巨泉、愛川欽也など、実際に戦争を体験し、その悲劇を語り継ぐことで反戦の思いを訴えていた人々が次々に亡くなっている。
安倍政権の強権的な姿勢を支持する人がいる背景に、そういった戦争の悲劇を学んでいない人間が多く存在するという事実は確実にあるだろう。だからこそ、我々は彼らが送り続けていたメッセージを改めて読み深め、代わりになってその体験を発信し続ける義務がある。
野際は平和への思いをこのように語っていた。その言葉を噛み締めながら、ご冥福をお祈りしたい。
「いま核兵器をもっていても、使うと地球はたぶんおしまいです。「平和にしよう」と考えている人はいっぱいいるわけですから、戦争をなくすことはできないことではないと思います」(前掲「革新懇ニュース」11年9月号)
(編集部)
最終更新:2017.12.05 01:28