そして、なにより「岩盤規制として開けた穴」の不条理な点は、昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で決定された「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る」という条件だ。これによって、近県の大阪府立大に獣医学部が存在する京産大は振り落とされることとなり、結果として加計学園に軍配があがった。
この決定を正当化するのに、安倍首相を筆頭に「四国には獣医学部がない」と強調するが、じつは2020年度の「獣医師の確保目標」では、京都府が32人に対し、愛媛県は0人。現実には、加計学園が獣医学部を新設する愛媛県よりも、京産大がある京都府のほうが獣医師は足りていないのだ。この不足分にしても、大阪府立大が要望しているように、既存の大学定員を増やすことや、前述した女性が復職しやすい環境づくりなどの努力を行うことのほうが、わざわざ学部を新設するより先に取り組むべきだろう。
また、「四国に感染症対策を行う機関と人材が必要」という意見もあるが、日本獣医師連盟委員長の北村直人・元自民党衆院議員は、こう否定している。
「獣医学系大学のある宮崎で口蹄疫が流行した際も、国や県、他県の獣医師らが対応したのであって、一大学だけでどうなるものでもない。また、今治には獣医師を採用する公的機関や企業がなく、卒業生が地元に貢献できる環境にもありません」(「サンデー毎日」6月18日号/毎日新聞社)
つまり、四国に獣医学部を新設すべき理由は、何一つもないのだ。
しかも、既報の通り、当初は内閣府も新設条件の原案では「広域的」「限る」という文言を入れていなかった。この原案は、2015年に閣議決定された「日本再興戦略」で示された獣医学部新設の4条件を踏襲しておらず、当時、文科省がそれを指摘していたことがわかっているが、内閣府は4条件を含めるどころか、土壇場で「広域的」「限る」という言葉を足したのだ。それはもはや「京産大外しのため=加計学園ありき」としか説明できない行動だ。