前川氏が出会い系バー? 実名告発の直前に下半身スキャンダルとは、あまりのタイミングのよさにびっくりだが、もっと驚いたのはその中身だ。
見出しだけみると、天下りを仕切っていた悪徳官僚が業者にたかって接待を受けていたとか、出会い系で未成年に買春行為を働いたとかそういう印象を受けるが、記事にはそういう記述は一切出てこない。
記事にある事実は、「歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたことが関係者の取材でわかった」、それだけなのである。
読売はそのあとも、〈「割り切り」と称して、売春や援助交際を男性に持ちかけることが多い〉などとして、前川前次官が〈女性と連れ立って店外に出たこともあった〉などと書いているが、根拠らしいものは何もない。それこそ怪文書のような記事である。
週刊誌でも名誉毀損に関わる下半身スキャンダルを記事にするときは、写真のような物証や関係をもった女性の証言などを提示するものだ。これでは三流実話誌並みだろう。というか、そもそもどんな物証があっても、刑事事件にもなっていない、職務とも関係していない官僚の下半身スキャンダルを大手全国紙が記事にするなんてケースは、これまで見たことも聞いたこともない。
しかも、読売は官僚や政治家の不正は他紙がやっても最後まで報道しないことの多い、スキャンダルに慎重なメディアだ。それが、ただ「歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていた」というだけで、デカデカと記事にするというのはどう考えても異常だろう。
取材してみると、この読売記事にはお察しの通りの裏があった。そう、読売の記事はまさに、加計学園問題の実名告発を潰すための官邸のリークだったのである。
「もともと官邸は前川氏が事務次官在任中から目をつけていて、公安にこの“出会い系バー”通いをキャッチした。読売が書いたのはその情報とまったく同じものです。読売は最初の段階では政治部が動いていますから、太いパイプのある今井尚哉首相秘書官あたりに記事にしろ、と命じられたんじゃないでしょうか。お墨付きがないと、あんな記事、とても怖くて出せませんよ。安倍首相の憲法改正インタビューを見てもわかるように、最近の読売は完全の政権広報紙ですから」(全国紙政治部記者)