すると金田法相は、当初は質問には直接答えず「ひとつひとつ答えることについては、この法案作成に携わった政府参考人の方もお呼びいただきたい」などと政府へ責任転嫁するなど長々とエクスキューズ。しかし次第にヤジの声が大きくなると、「その上でお答えします、いいですか、その上で」として、下を向き早口でペーパーを読み上げるようにして、こんなことを言い出したのだ。
「保安林の区域内の森林窃盗は、保安林の産物を窃取する罪であります。組織的犯罪集団が、組織の維持運営に必要な資金を得るために計画することが現実的に想定されることから、対象犯罪としたものであります。つまり森林窃盗の対象となる産物には、立木、竹、キノコ、といった森林から生育発生される一切が含まれるほか、森林内の鉱物、その他の土砂、岩石など無機物産出物も含まれるものと言えるわけであります。このような森林窃盗の対象となる客体に鑑みた場合、相当の経済的利益を生じる場合もあるから、組織的犯罪集団が組織の維持運営に、必要な資金を得るために計画することが現実的に想定されるのであります」
テロ集団が、せっせと山でキノコ泥棒!? 山尾議員もこれには「国民の常識とはあまりにかけ離れた答弁。これテロ対策なんでしょうか?」と呆れていたが、しかし、これこそが共謀罪の本質なのだ。
つまり共謀罪の目的とは、権力に批判的な言動をする人々や団体を取り締まることに他ならない。だからこそ政府としては、とにかく、対象を広げられるだけ広げようとしているのだ。
実際、金田法相と山尾議員のやりとりからは、この目的のために政府が駆使している詐術も明らかになった。この間、政府は与党内からも上がった共謀罪反対の声に、処罰対象の犯罪数を615から277に減らしたとする情報を流してきたが、山尾議員は、実際には法務省からは正式なリストも出されていない上、そのカウント方法が“操作されたもの”だと指摘したのだ。
「(今回メディアに掲載された277の)リストと、過去の615の法務省として責任をもった罪のリストを比較してみました。そうしたら、カウント方法が違っているんですね。以前は例えば電車の往来危険罪と、船舶の往来危険罪、これが別々に2つの罪としてカウントしています。今回は2つまとめて往来危険罪1罪です。もうひとつ。以前は激発物の破裂について、対象となる建造物が性質によってちがうので、3つに分けてカウントされていました。今回は3つをまとめて1つです。このように以前と同じカウント方法でフェアに数えたら300を超えるのではないですか」