稲田朋美HPより
「教育勅語は現代でも通用するような価値観」──今月11日、またも稲田朋美防衛相が教育勅語について肯定してみせた。
安倍政権は3月31日に教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」という答弁書を閣議決定。森友学園問題では交渉記録データの復元を命ずることもなく、安倍昭恵夫人の証人喚問も拒否し続ける安倍首相だが、この問題をきっかけにメディアにクローズアップされるようになった教育勅語については、逆に教育現場へのもち込みを恰好の契機が訪れたとばかりに認めようとしている。
さすがに戦後の反省がまったくない「教育勅語肯定論」に対しては、あの読売新聞までもが社説で批判。当然の姿勢だ。「国家のために勇気をもって身命を捧げ、永遠に続く天皇の勢威を支えよ」と謳い、国民主権を否定する教育勅語は、現在の民主主義に反する軍国主義の象徴でしかないからだ。
しかし、そうした歴史を踏まえることなく、稲田防衛相ら極右の政治家や論客に感化されているのか、テレビやネットでもネトウヨ芸人の小籔千豊をはじめ「いいことも書いてある」「教育勅語じたいは悪くない」などという妄言が跋扈している。
そんな風潮を反映しているのが、現在、Yahoo!ニュースが投票を行っている「意識調査」だろう。4月3日からはじまったこの意識調査では「あなたは、教育勅語の教材活用についてどう思いますか?」とアンケートを行っており、14日現在「問題ある56.6% 問題ない38.8%」と五分五分に近い状態になっている。あくまでネット上のアンケートで厳密に世論を反映したものではないだろうが、それにしてもなぜここまで「問題ない」派が多いのか。
不思議に思っていたら、そこで参考資料として紹介されているのが、なんとあの「インチキ現代語訳」だったのである。意識調査では、〈菅官房長官は、教育勅語の教材活用について「懸念は生じない」との認識を示しました。一方、野党は「教育勅語は憲法と教育基本法に反する」と非難しています。あなたは、教育勅語の教材活用についてどう思いますか?〉というキャプションに続けて、参考資料として〈教育勅語の口語文訳など(明治神宮)〉というリンクを用意。しかし、この現代語訳には、教育勅語の肝である「天皇のため」「皇室のため」という言葉は一切出てこない。他の表現もことごとくソフトになっているのである。
実は、教育勅語復活論者たちがもち出すのも、きまってこの“インチキ現代語訳”なのだ。